長期化するコスト高対策を

物価高による消費のマイナス影響や、長期化するコスト圧力が中小トラック事業者の経営マインドを下げているようだ。
全国中小企業団体中央会(全国中央会)が発表した5月の中小企業月次景況調査によると、運輸業の景況DIは5カ月ぶりに悪化した。連休で稼働率が低下し、売上高DIが大きく落ち込んだ。全体ではコロナ禍からの正常化による人流の回復で、製造業、非製造業ともに景況感は改善傾向だが、エネルギー・原材料価格上昇分の価格転嫁が遅れていることや、人手不足の問題が収益力の足かせとなっている。運輸業はそのマイナス要因の影響が大きい。
貨物事業者からは「個人消費の低迷が物流量にも影響」との声も聞かれる。そうした中でコスト圧力の問題もより強まっている。
一昨年12月に政府が「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」を策定し、コスト上昇分を適正に価格転嫁されるよう、公正取引委員会や中小企業庁など省庁連携によりトラック運送業界においても荷主や元請の商慣行是正につながる施策が講じられてきた。
さらに先月には「物流革新に向けた政策パッケージ」が策定された。「標準的な運賃」には現下のコスト高を反映するよう制度の拡充が盛り込まれており、価格交渉に動けるよう国の後押し、環境整備が進んでいるのは確かだ。
中小企業庁が公表した3月の価格交渉促進月間フォローアップ調査結果では、全体、トラック運送業界とも価格交渉の協議については前回の9月調査より上向く一方で、価格転嫁率は改善がみられなかった。とくにトラック運送業界の下請け事業者は転嫁率が最も低い状況が変わらない。
発注側事業者がしっかり価格交渉に応じるよう働きかけ、様ざまな措置により商慣行見直し機運も高まるが、同時に燃料や原材料、労務費などコスト高もさらに進んでおり、価格転嫁が追い付かないのが実態である。長期化するコスト高はとくに下請けである中小事業者にしわ寄せが生じてしまう。
資源エネルギー庁が発表した26日時点の軽油店頭価格は1㍑あたり150・8円と前週よりも0・8円上昇。これで6週連続の値上がりで151円台に迫る。
物流改善の動きが強まる中で、サプライチェーンにおける物流の実運送がしっかり適正運賃を収受できる流れを注視したい。