重要インフラの認識を
昨年12月に議員立法で成立した、改正貨物自動車運送事業法における『荷主対策の深度化』が早ければ今夏にも施行される見通しだ。荷主の理解・協力による働き方改革の実現へ大きく前進する。
事業法改正は、トラック運送業の健全な発展へ規制の適正化を図るほか、2024年度から時間外労働の限度時間が設定されることを踏まえ、運転者不足で重要な社会インフラである物流が滞らないよう、緊急に運転者の労働条件を改善するべく措置を講じるものだ。
国土交通省の奥田哲也自動車局長は「必要な省令、通達の整備や実際の運用にはトラック事業の健全な発展、ドライバーの労働環境の改善という改正法の趣旨に沿ったものにする」とし『標準的な運賃の告示制度の導入』も早期の施行へ準備を進める考えを示す。
『荷主対策の深度化』は、法令遵守できるよう、荷主の配慮義務を設けるほか、既存の荷主勧告制度の対象に軽自動車運送を追加するなど制度を強化。国交相による荷主への働きかけ等規定も盛り込む。このため関係省庁と連携を進めながら今夏の施行を目指している。
荷主対策については、大型トラックの乗務記録の対象に、荷役作業の集荷地点や作業内容などを追加する輸送安全規則も改正、15日に施行する。安全面、労務面でのコンプライアンスの確保や、取引環境の適正化へ、荷役作業の実態を把握して過労運転の防止につなげる観点である。
さらに荷主、物流事業者の連携で働きやすく、生産性の高い物流実現へ、企業・国民の理解・協力を得る「ホワイト物流」推進運動の賛同募集も行われ、全国各地の説明会では多くの荷主企業が参加。こうした中で荷主対策の深度化に向けた施策が実効性あるものとして期待される。
一方で今般の改正事業法の『規制の適正化』『事業者が遵守すべき事項の明確化』では関係省令、通達の改正案について5月30日付でパブリックコメントが出され、今夏に公布・通達発出、年内の施行を目指している。
法令違反者の参入を厳格化し、欠陥期間を2年から5年に延長、処分逃れの自主廃業者の参入制限、約款の許可基準の明確化などを盛り込んでいる。事業用自動車の点検・整備、車庫の整備・管理、保険料納付など遵守事項も明確化する。
荷主対策や標準的運賃告示は大きなサポートとなるが、同時に適正な事業環境を構築する上での〝見える化〟も進む。トラック運送業の重要な社会インフラとしての存在意義をあらためて認識したい。