転嫁進捗も物量停滞

帝国データバンク(TDB)の景気動向調査では、運輸・倉庫業界の景気DIは3~6月とほぼ横ばいの状況だ。この間、運賃動向を反映する販売単価DIは毎月過去最高を更新するが、個人消費の低迷などの影響から荷動きがなかなか上向かないようだ。
直近の6月の景気DIは全業種で前月比0・2ポイント減の43・3と3カ月連続で悪化した。3カ月連続の悪化は約4年ぶりとなる。
DIは50が景気の良い・悪いの判断基準の中間となる。運輸・倉庫業は2月の41・9を底に3月、4月が43・1、5月43・3、6月43・4。うち、約6割を占める一般貨物自動車運送業も2月の39・0を底に、3月40・2、4月40・4、5月、6月40・6で推移している。
円安に伴うコスト負担の高まりや個人消費の落ち込みが全体景気の下押し要因であり、消費者の節約志向を懸念する声が多いという。今後も日銀の追加利上げや人手不足の継続などマイナス要因も多く、横ばい傾向で推移すると見ている。
5月の同調査では、消費の低迷は中小ほど厳しく企業間格差で濃淡が表れたとコメントしている。物流関係も大手と比べて中小ほど消費低迷による荷動きの影響を受けているようだ。
全国中小企業団体連合会(全国中央会)の5月の景況調査では、運輸業は売上高DI、収益状況DIが4カ月ぶりの悪化、景況DIは2カ月ぶりの悪化だが、2022年9月以来の低い水準に落ち込んだ。とくにトラック運送業は中小零細が多数であり、この物量の停滞感の先行きが懸念されるところだ。
一方でTDB調査では6月の運輸・倉庫業の販売単価DIが62・1(前月62・0)と微増ながら4カ月連続で過去最高を更新し、コスト上昇に対する一定の価格転嫁が進んでいることが伺える。先の企業規模別の状況をみると、6月は中小企業が3カ月連続の悪化だが、大企業と小規模企業が3カ月ぶりに改善した。
小規模企業では10業界のうち運輸・倉庫を含む5業種が改善した。運輸・倉庫は貸切バスの利用や標準的運賃の告示の引上げなども要因にあげている。
しかし一定の運賃転嫁が進んでも、肝心の物量が減少すると収益の厳しさは変わらない。荷動きが上向かない状況が続くと事業者間で価格競争に陥いる懸念もある。適正取引へ行政の監視体制も強化されており状況を注視したい。