足元のコスト負担是正を

日本倉庫協会、日本冷蔵倉庫協会、全国定温倉庫協同組合が9日の自民党物流倉庫振興推進議員連盟の総会で、コスト上昇分の価格転嫁など電力料金高騰への措置を強く要請した。
倉庫業界における電力コストのウエイトは大きい。さらなる値上げも相次ぎ深刻度は増す。冷凍冷蔵倉庫や定温倉庫では電力・動力コストの割合は10%近くとされ、自助努力だけでは対応できない状況だ。新電力会社の事業撤退で割高な電力の利用を強いられる中小事業者も多い。
議連総会では日本冷蔵倉庫協会の田中一範副会長が「昨年より50%超の値上げが聞かれ、今後1年間の電気料金支払いは2倍との報告もある」と各地区から悲痛の声が上がっている現状を訴えた。
この間の国の価格転嫁施策も、倉庫業界では荷主への周知もあり「円滑に実現しているとは言い難い状況」(日本倉庫協会久保高伸会長)で、価格転嫁、取引適正化へのさらなる取り組みが求められる。
議連は電力価格の安定と上昇分の適切な転嫁に努めることを決議文に示したが、持続可能な物流に向け、倉庫機能の維持は勿論、求められるカーボンニュートラル、物流DXの推進にも足元の事業者のコスト負担是正が最優先課題だ。
DX、GX、さらには災害時対応において倉庫業界が果たす役割はまますます高まる。
今般、営業倉庫の庇の規制が緩和されたことは大規模庇の設置を促し、物流効率化とともに災害対応にも大きく寄与する。
日倉協では、この庇の建ぺい率・容積率算入基準見直しに際しては引き続き時代の変化や要請、業界実情を踏まえ不断の見直しが必要とし、さらに倉庫施設のカーボンニュートラル化へ、高さ制限などが緩和される市町村の再エネ利用促進地区の指定推進も求めた。
倉庫業界の予算・税制面では特例措置のほか、予算関係では2020年度から自動化機器・システムと再エネ設備の同時導入を支援する「自立型ゼロエネルギー倉庫モデル促進事業」が進められている。広く普及すれば脱炭素化に労働力不足対策、災害対応など地域課題解決に大きく貢献する。来年度概算要求には新規に倉庫施設への非常用電源装置の補助制度も盛り込まれている。
これら動きは社会インフラとしての倉庫業界への期待の表れである。中小事業者が前向きに取り組めるよう、何より足元の電気料金高騰への支援措置が急務だ。