計画運行の意義浸透を

災害時に被災地への緊急物資輸送を担う、トラック運送事業者の存在の大きさが再認識される。新年会の企業・団体トップあいさつからも災害対応力の重要さが聞かれる一方、ドライバーの安全確保、物流機能維持の観点からの環境整備も急がれる。
国土交通省は、台風などの異常気象時において、トラック輸送の安全確保の措置や中止判断の目安を定める法的整備を進めている。
安全確保が困難な状況でも、荷主に輸送を強要され、トラックが横転するなどの事故が発生している。当初の運行計画が崩れることで物流全体の効率性が損なわれることから必要な措置を講じるものだ。
安全は何より再優先される。人手不足が深刻化する中で、まずトラック運送業界の労働環境改善につながる基盤づくりが望まれる。
風水害はある程度予知できる。東京2020大会に向けてTDM(交通需要マネジメント)が各方面で検討されているが、こうした予知できる災害もサプライチェーン全体で予め対応を進め、安全確保と物流維持を可能な限り両立できる環境整備を進めていく必要がある。
昨年の台風19号では公共交通機関が早くから計画運休を実施し、人の移動においては影響を軽減させた。貨物輸送も大手宅配事業者が一部地域で集荷・配送業務の停止、遅延を実行するなどの措置がとられた。
しかし一方では荷主からの輸送の強要、また荷主との取引関係における輸送事業者の立場や、多層構造というトラック運送業界独特の産業構造がある。当然である従業員の安全への配慮を怠るケースも想定される。
中止判断による荷動きへの影響も、業種によりさまざまな事情が考えられる。多層構造の中でどこがどう判断するかの議論もあろう。判断ができても、迅速に実行できるか現場の事情も多分にある。
国は取引適正化に向け様々な施策を打ち出しているが、異常気象時下の措置においても荷主、サプライチェーン全体で共有できるものとしなければ実効性はない。
今回、異常気象時の輸送の在り方として国が示した概要案によると、雨風の強弱で安全確保への措置、輸送中止の検討ちった目安を定め、輸送中止の場合の対応や、中止等判断を行っても荷主から輸送を強要された場合の対応も定めるという。
安全確保を第一に、異常気象時のトラック計画運行の意義を広く浸透させる必要がある。