行政の本気度受け止め

物流、トラック関係団体、事業者の新年会あいさつからは力のこもった発言が聞かれる。コロナ禍の見合わせから3年ぶりとなったところも多い。その分か、課題解決や業界活性化へ並々ならぬ思いを感じる。
感染拡大、コスト高が続き不安要素を抱えたまま新年に入った。物流は2024年問題に直面する切迫感もある。そうした危機意識を広く共有し業界一丸でしっかり対応していこうとの姿勢だ。
24年問題は個社の働き方改革とともに「お客さま、パートナー、消費者にもその対応が簡単でないことを理解いただく」(池田潤一郎物流連会長)。広く社会に投げかけ、物流改善への理解と実行を促す。
トラックは適正運賃収受が何よりの課題である。
全日本トラック協会の坂本克己会長は新年会後の記者会見で、転嫁円滑化パッケージによる国の一連の施策に言及、適正運賃収受へ荷主や元請に「体を張り、体当たりで交渉する。そうでなければ延長(時限措置)はできない」と強く訴えた。
改正貨物事業法の標準的な運賃、荷主への働きかけは24年4月までの時限措置。延長要望の動きや、各方面の協力の声も聞かれる。ただ標準的な運賃は届出とともに実際に荷主へ交渉に動かなければ制度の意味がない。措置の延長、恒久化はゴールではない。交渉に動くことだ。
坂本会長は新年会のあいさつで「ドライバーが夢と希望を持ち、家族ともども称えるようにすること」を新年の目標に掲げる。物流を支える現場のドライバーを守るため体を張って交渉することを呼び掛ける。
帝国データバンクの調査では、コスト上昇に対する価格転嫁率は全体の4割に対し、運輸・倉庫業界は2割と大きな開きがある。一定の転嫁は進むがコスト上昇がそれを上回る。その対応策として運輸・倉庫業界は「自社経費の削減」が全体より高い。自助努力の対応にも限界がある。
さらに価格転嫁が難しい理由に「取引企業から理解が得られ難い」が全体4割に対し倉庫・運輸は6割。事業者からは「競合他社との兼ね合いが強く、自社だけで交渉することは難しい」と価格交渉で受注の減少への懸念が聞かれる。
公正取引委員会は昨年12月に優越的地位の濫用に関する緊急調査で事業者名を公表するなどさらに踏む込む。トラック運送業では元請事業者21社出席による適正取引推進会議も行われるなど、行政の本気度も伝わってくる。これをしっかり受け止めなければならない。