若者から選ばれる産業に

トラックの改善基準告示見直しに関する議論が本格化してきた。7月にも取りまとめる方向だが、使用者側が主張する荷主都合による影響を、過労死防止の観点で行われる告示改正にどこまで反映されるかが焦点になる。この議論に向けトラックは事業者、運転者への実態調査を2回行った。コロナ禍の物流変化を考慮する必要があるためだ。前年度調査との比較では拘束時間は概ね減少している。一般則の時間外720時間を念頭に入れた拘束時間年3300時間は8割弱、1カ月275時間は3分の2が守られているとの結果だった。事業者の働き方改革が進んでいることが伺えるが、一方でコロナ禍により扱い業種によっては輸送量が減少した影響も考えられる。また拘束時間が増加した業種(発荷主)も飲料・食料品製造業などでみられ、コロナ禍で業種による状況変化がおきていることも認識する必要がある。21日のトラック作業部会では、使用者側からとくに着荷主の荷待ちが指摘された。実態調査からも事業者が改善基準告示を遵守することが難しい理由は「着荷主の荷待発生」が41・8%と最多であり、その割合は前年より4・5ポイント増えている。自社の裁量に及ばないところで運送事業者に罰則がかかることについて、使用側は厚労省にも荷主への働き掛けなどを求めている。「同じ土俵」における法令遵守の枠組みが急がれる。一方、実態調査の中で前年度回答者ベースの追跡調査からは1日拘束時間「16時間超」が、わずかながら増えている。また、運転者が収入を増やすために改善基準告示等の基準を超えても長時間働きたいと考えるかについては「働きたい」と42・8%が回答したが、前年より3・4ポイント減少、これ以上働きたくないとの回答が増えている。こうした現場の実態もしっかり踏まえる必要がある。トラック作業部会長の藤村博之法政大学大学院教授は同日会合の冒頭、過労死防止の観点から長時間労働を適正水準にすることと、労使双方の意見として「若者から選ばれる産業になること」とあらためてその趣旨を述べ、これら問題意識のもとでの議論を求めた。長時間労働が野放しでは、人は入らず業界全体の危機を招く。2024年4月の改正法施行へ公布は年内が目途。しっかり法令遵守できる周知期間が必要である。議論でも聞かれた商慣行を変えていく流れもスピード感をもって進める必要がある。