自助努力だけでは限界
2018年度下期に入り、製品値上げをする製造業の荷主企業が少なくない。11月は値上げラッシュだ。原料や燃料価格の高騰に加えて、物流費の上昇などを転嫁するため、上期に続いて再度の価格改定に踏み切っている。
荷主業界を取り巻く物流環境は、ドライバー不足を背景とした物流費の上昇により厳しさが増しており、「自社での吸収に限界」がきているという。物流企業も人手不足や軽油高騰などを背景に、荷主企業との値上げ交渉を進めており、一定の影響を及ぼしていることもうかがえる。
現状では今後も、労働力不足のさらなる深刻化、働き方改革に伴うコストアップなどにより、物流コストの上昇トレンドは続くことが予想されている。荷主企業にとっても、ビジネスに不可欠な「モノを届ける」ためには、物流企業に一定の「対価」を支払うことは避けられず、負担の一部を転嫁する動きはさらに加速するだろう。
消費者やエンドユーザーへの価格転嫁がさらに進めば、まだ「果実」を得ていない中小物流企業でも、適正運賃・料金の収受へ進むことは十分に期待できる。
ただ、物流企業にとって、頭が痛いのは燃料費の高騰である。資源エネルギー庁が発表した15日時点の軽油小売価格は全国平均で前週(9日)に比べ2・1円も上昇し1㍑当たり138円と、4年ぶりに138円台を記録した。
にもかかわらず、中小物流企業からは表立った燃料費高騰への危機感はみられない。差し迫った危機感としては、労働条件の改善を進めることのほか、高齢化の進むドライバーら従業員の補充など、労働力確保対策があげられる。
一方、段ボール原紙・段ボール製品業界では原材料の古紙、重油などの燃料価格に加え、ドライバー不足による物流経費の上昇を転嫁するため、主要な企業が昨年8月に続き、今年も11月1日出荷分から値上げする。背景として、企業関係者は「米国によるイラン制裁の再開などで原油相場が強含んだ結果、重油価格が値上がりし、収益を圧迫している」ことをあげる。
いま、トラック運送業界では、業界で働く従業員の労働時間を全産業平均水準に引き下げ、賃金水準を世間並みへ引き上げる労働環境の整備が求められている。そのためには、原資が必要である。
荷主企業が燃料費や物流費などのコスト増加への対応は「自助努力では困難」と製品値上げをしている。トラック運送事業も自助努力だけでは限界であることは明らかだ。