脱炭素化へ取り組みを深化

2050年カーボンニュートラル実現に向け自動車分野の議論が始まった。国土交通省、経済産業省が有識者による検討会を立ち上げた。温室効果ガスの排出量ゼロという明確な目標に対し、関係事業者がどう動くべきか、分かりやすい方向性を示してほしい。
昨年10月の菅総理の所信表明演説で宣言された2050年カーボンニュートラル。これを受け、各方面で脱炭素社会を目指す動きが加速化している。事業者はSDGS(持続可能な開発目標)の流れから、経営課題における環境施策の位置づけを一段と高めている。とりわけ自動車関連産業の果たす役割は大きい。
昨年12月の成長戦略会議で報告された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において「自動車・蓄電池産業分野」は重要分野となっている。実行計画にはEV(電気自動車)等の電動車の普及について、商用車も今夏までに検討を進めるとしており、検討会ではこのタイミングに向け各関係にヒアリングを進める。メーカーに運輸業などユーザー、関連インフラとポジションも異なるそれぞれの実態に即した課題、要望を収集する必要がある。
脱炭素化に向けては街づくりの展望にも大きく関わる。初会合では自治体(長野県、横浜市)の説明があったが、並行してインターネットで一般からの意見公募も行っており、広く社会の意見を反映させたい。
運輸業は中小零細企業が多い。2050カーボンニュートラルへの理解と事業者にとって何ができるか明らかにしたい。
電動化に向け大きな課題はコストだ。トラック運送業は燃料価格の変動が経営に大きく影響する。実行計画には30年までのできるだけ早期にEVとガソリン車の経済性が同等となる車載用電池パック価格1万円/kwh以下を実現するとしている。
一方で大型車はFVC(燃料電池車)の実証も進められている。ハイブリッドも含め、ユーザーが理解しやすい電動車の選択・利用促進策が望まれる。
実行計画にはこれら電動車の選択・利用の促進に、物流の効率化・生産性向上実現に向けた自動走行・デジタル技術の活用なども含めた「車の使い方の変革」についても対策を講じる。
物流業界は人手不足の解消へ効率化を進め、共同配送など車両台数の減少がCО2排出量削減に繋がっている。環境改善への意識は高まっており、取り組みを深化させる契機にとらえたい。