目指すところは〝三方良し〟

省庁連携による「持続可能な物流の実現に向けた検討会」で中間とりまとめ案が示された。昨年9月2日の初会合から業界団体、事業者のヒアリングと議論を重ね、5回目の会合で具体的な政策の方向性を示した。
現状課題を把握する中で、NX総研が改正改善基準告示による3300時間の運用で14%の輸送が不足するという試算や、政策面で既存のガイドラインでは効力が弱く、類似法令を参考に規制的措置を講じるとの方向付けは大きなインパクトがある。それだけ物流事業者のみならず荷主、社会全体でも物が運べない危機意識が深刻化している表れだろう。
今後、荷主団体等にヒアリングし、5~6月にもKPIなどより明確な目標数値を立てて最終取りまとめを公表する考えだ。〝2024年問題〟が現実のもとして迫る中、示した政策が法令等に反映されるよう迅速な対応が求められる。
荷主の物流改善を促すより実効性ある措置として、類似法令を参考に規定する考えだが、例えば経営者層の意識改革では、省エネ法のエネルギー使用の改善に係る業務管理者の選任をあげる。また、待機・荷役時間や納品回数・リードタイムなど改善計画についても、省エネ法の中長期計画の作成や定期報告に係る規定を参考とするなどより明確に方向付けている。
一方でトラック運送業界の多重下請構造の是正については、一括下請の禁止など建設業法の例をあげるが、業界特性の配慮が必要とし、まず多重下請の現状や、契約と実際の業務内容の関係を調査した上で必要な措置を講じるとしている。
荷主の中でもとくに着荷主の物流改善が急がれる。検討会の議論でも多くの意見が聞かれる。
第4回の会合で示した骨子案に対し小売り4団体が意見表明した。「国の政策の対象となることについては、その選定と措置内容に係る十分な実態把握に基づく根拠と必要性」を求めた。様ざまなサプライチェーンを俯瞰し、どこにどのような問題がどの程度存在するのかを把握すべきとした。
メーカーも調達物流では着荷主である。サプライチェーン全体で取引関係におけるさらなる可視化が求められる。
中間取りまとめ案には「物流事業者・荷主企業・消費者が〝三方良し〟となる社会を目指す」としている。とくに足元が厳しい物流業界としては施策の実効性と迅速さが望まれるが、持続可能とするにはそれぞれウィンウィンの関係が前提となる。