物流革新の追い風に乗る
物流各社の入社式では、2024年問題に直面する厳しい環境をチャンスと捉え、「チャレンジ」、「コミュニケーション」など積極的な姿勢を促す経営トップの言葉が目についた。
あらゆるコスト高と荷動きの低迷もあり、24年度も厳しい経営環境が続く中で、今年も多くの新入社員を迎える。トップのあいさつからは各社の成長戦略、将来ビジョンにも触れながら、その実現へともに果敢に挑む方向を確認したようだ。
コロナ禍では休止やリモートだった入社式も今年は多くが対面に戻った。
新社会人はコロナ禍で学生生活を過ごしたこともあり、「積極的に社員やお客様とコミュニケーションを」、「失敗を恐れず、多くのことに挑戦を」と対話や接し方に重きを置く発言が多く聞かれた。
人事労務分野の情報機関である産労総合研究所によると、今年の新入社員はデジタルに親しむ一方、コミュニケーションの経験に乏しいことや、「タイパ」を重視し、唯一の正解を求める傾向という。言い換えれば、目標を見定め、集中して向かう熱意と、効率を重視し最適解を実行する振る舞いに長けるという。
時間外労働の上限規制適用が始まった節目の日に物流業界に足を踏み込んだ新入社員たち。24年問題で多くのメディアが対応に苦慮する業界を取り上げた。そこには国の規制的措置や、消費者への再配達削減など行動変容を促す施策もあり、職場環境にプラスの印象を与える。一方でそれだけものが運べない危機的な状況にあり、長時間労働の規制が課せられるも実際の現場はどうか不安も抱えることだろう。
そうした中で物流業界を選んだ人たちの志、思いを尊重したい。経営トップが「ピンチをチャンスに」と話すのは、足元は厳しいが、DX、自動化、さらにモーダルコンビネーションの活用など物流変革の新たな起点と同じくして迎え入れた新社会人への力強い激励であろう。
国が試算した24年14%、30年34%という輸送力不足をサプライチェーン全体で回避しようという機運は着実に高まっている。「持続可能な物流」から物流の「持続的成長」へと突き進む大きな転換点でもある。
近年になく物流への関心が集まり、新入社員も業界が置かれる現状はよく認識しているだろう。各社の特性、強みを踏まえ、若い感性による新たな価値創出への可能性も膨らむ。自信を持って物流革新の追い風に乗ってほしい。