物流適正化を総合的に

国が昨年6月に取りまとめた「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」には、発着荷主事業者の実施が必要な事項の1つに「物流管理統括者の選定」がある。日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が昨年12月に行ったアンケート調査では、会員荷主事業者の27%が「既に選定済」とし、「今後選定予定」を含めると6割となる。荷主の物流改善に向けた動きが進展する。
ガイドラインには物流管理統括者を「物流の適正化・生産性向上に向けた取り組みを事業者内において総合的に実施するため、物流業務の実施を統括管理する者(役員等)」と位置付けている。物流管理統括者はその責任者として「販売部門、調達部門等の他部門との交渉・調整を行う」としている。
ガイドラインに沿った自主行動計画の作成を求めており、昨年末で103の団体・事業者が作成、公表している。各業界団体の自主行動計画には「物流管理統括者の選定」が明記されている。これを受け、傘下の事業者が統括責任者を設け、物流改善を主導する立場として積極的な取り組みが期待される。
ガイドラインにある荷待ち荷役の時間把握や2時間以内ルール、運送契約の書面化など荷主の実施必要項目の多くが、公表された自主行動計画に明記されるが、これらも事業者内で総合的に調整する責任者を置くことで実効性を担保できる。企業として広く「物流の適正化・生産性向上」に取り組むことで、荷主側の物流への認識も変わり、新たな視点を生む可能性もある。
JILSは毎年会員へのアンケート調査を行っている。今回、サプライチェーン別課題の自由記入において、「商慣習の見直し」に関する回答が多数あった。規制的措置が導入されることで関心も高い。抜本的改革を求める声が多いという。
さらに荷主の経営層における物流への理解も進展がみられる。物流への認識で「調達から販売を通じた自社の物流の全体最適」や「業者、取引先による持続可能な物流構築」といった項目が上昇したほか、「環境やSDGsなど社会課題解決の鍵」は52%(前回46%)と半数を超えた。前回50%だった「物流はコストであり、コスト削減が最優先事項」は47%と半数を割った。
物流は様ざまな社会課題の解決や新たな価値提供の源泉にもなる。荷主、社会に広く投げかける契機にある。