物流改善へ機運高める

国土交通省が幹線輸送の効率化方策の手引きを策定した。トラックドライバー不足で「ものが運べない」危機意識が社会全般に浸透する中で、荷主と物流事業者の関係者が一体で持続可能な物流の実現へ改善を図る好機ととらえる。効率化の考え方を分かりやすく整理した上で詳細な事例集を盛り込んでおり、幅広く周知させたい。
手引きによると、トラック輸送全体に占める幹線輸送(都道府県を跨ぐ県間流動で輸送距離300㌔㍍以上)の割合はトンキロベースで6割近くと推計する。幹線輸送の効率化は物流全体の生産性向上に大きく寄与する。トラックドライバー時間外労働時間の上限規制の適用まで3年を切っており、効率化へ有効な施策を共有したい。
労働条件を他産業と同等とすると、2025年に幹線輸送に必要な乗務員数は現在より17・8%不足と試算した。貨物量が減少傾向でも8・0%不足とする。給与面では他産業と同等とした場合、現在の時給水準で1・32倍の上昇を見込むとしている。
国交省は手引き作成にあたり、運送事業者にヒアリング調査を実施した。少子高齢化で人手不足が続く中、効率化によりこのギャップをどこまで是正できるか。調査からは働き方改革の対応に物流生産性向上のスピードが追いつけるかとの疑問の声も聞かれる。
効率化の手を打っても時間指定や付帯作業など妨げる要因が解決しなければ前進しない。荷主との商慣習の見直しや取引適正化についてもスピード感を持って進める必要がある。
一方で事例集をみると、効率化の取り組みの背景には、ドライバーの労働力不足に荷主企業の環境意識の高まりもあげられる。人手不足問題や環境対策と企業のSDGSへの対応が求められ、荷主側の改善意識も高まっているのは確かだ。
事例集では効率化施策による効果やクリアできた課題、今後の可能性や残る課題など詳細を記している。事業規模を問わずにキーワード別に分かりやすく示している。
この中でF-LINEの鉄道、船舶によるマルチモーダルシフトの事例では、リードタイムが伸びた場合の荷主のメリットとして、自然災害や事故発生の遅延のリカバリーや遅延時に発生する需給・受注担当者の出荷調整、在庫管理などの対応業務の軽減をあげている。
こうした具体的事例の情報を広く周知し企業の枠を越えて抜本的な物流見直しを図る機運を高めていきたい。