正念場、実効性ある措置を

国土交通省はトラック運送事業者に対する「標準的な運賃」、「多重下請け」に係る実態調査を進めている。現場の状況を把握し、結果によって必要な措置を講じる。適正運賃を確実に収受できる環境整備につなげたい。
「標準的な運賃」の調査は告示以降制度の活用状況を把握するもの。1月末の事業者の届出割合は52・6%で関東が27・3%と依然として低い。原価計算の実施や運賃交渉への活用、交渉結果など細かい調査を行い月内にも取りまとめる。24年3月までの時限措置であり、延長も含め所要の対応を検討するとしている。
一方の「多重下請け」の調査では現状や契約と実際の業務内容の関係などを把握する。併せて荷主や実運送、利用運送事業者のヒアリングも行い4月にも調査をまとめる。こちらは省庁連携の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」最終とりまとめにおいて、多重下請け構造の是正や契約条件の明確化など必要な措置を検討する。
多重下請構造は従前からだが、公正取引委員会や中小企業庁の一連の調査結果から、トラック運送業界内での価格転嫁が進まないことがより鮮明となり、国も具体的な対策へ動きを強めている。
国交省が昨年12月に行った「トラック運送業における適正取引推進会議」では、元請5社が状況を説明、業界内の取引適正化を業界全体として推進することを確認した。その後、ヤマト運輸、佐川急便が4月から宅配便運賃の値上げを発表するなど、自社、協力会社の労働環境改善を図る方向を示しており、サプライチェーン全体でこうした動きがいかに広まるか注視される。
国交省の堀内丈太郎自動車局長は「多重下請け構造が良いということではなく、まず現状では多重下請け構造のもとでの適正な運賃収受に向けた環境整備が重要」との認識を示している。
とりわけ中小零細事業者はコスト圧力に人材確保の問題と、足元の収益改善に懸命だ。
先般、中間取りまとめを策定した「持続可能な物流の実現に向けた検討会」では、今夏の最終取りまとめに向け業界団体のヒアリングを重ね、足元の課題解決へ議論を深めている。
公取は新たに取引公正化推進アクションプランを策定し、緊急調査のフォローアップなど取引適正化に一段と強い姿勢で臨んでいる。
労働環境改善へのまさしく正念場にあり、より実効性ある措置が求められる。