標準的な運賃が改革後押し

改正事業法における「標準的な運賃の告示制度の導入」で国交大臣から運輸審議会へ諮問があり、算定した運賃表が明らかになった。これから審議を経て答申、運用となるが、改正事業法の中でも目玉となる「標準的な運賃」の施行が間近となり、トラック運送業の働き方改革が大きく前進する。
標準的な運賃は、トラック運送事業者が荷主への交渉力が弱く、必要なコストに見合う対価が得られなければ持続的な運営ができないことに対し、法令遵守して運営する際の目安として定めるもの。法的強制力はないが、運送事業者の労働条件の改善、健全な運営へ国交大臣が定め、告示するもので、荷主にも説得力のあるものとして交渉材料への活用を促す。
荷主との交渉時期を見据え、当初は年度内の導入を目指していたが、公聴会を4月に予定しており実際の施行は来年度となる。
国は運賃算定にあたり、貸切を前提に、実運送を行う下請けの運送事業者を標準とした。
トラック運送業界は人件費が一般より2割低いとされる中で、算定では人件費を全産業平均の時間当たり単価を基準としたことなど、実勢運賃よりも相応に高いものといえる。
荷主側も「標準的な運賃」を目安とすることが自社の法令遵守にも及ぶことから、荷主に対しての告示制度の周知徹底と、運送事業者が交渉しやすい環境整備も同時に求められる。
交渉への活用では、運賃をタリフ表で距離・時間制それぞれ4車種別・運輸局別に定め、距離制では10㌔㍍ごと、上限・下限の幅は設けずに統一運賃を示したことはツールとして分かりやすく、望まれていた「使い勝手の良い」内容である。
タリフ表のほか特殊車両、休日・早朝・深夜の割増や、待機時間、附帯業務などを別項目に設定。標準運送約款改正で運賃と料金の適正収受が求められる中で運送事業者もしっかりと交渉していく必要がある。
2023年度末までの時限措置であり、実際の運用は4年以内。働き方改革関連法で自動車運転者の労働時間上限規制の年960時間が24年4月まで猶予されており、事業者もこの間、より強固な収益基盤の構築と働き方改革に臨みたい。
改正事業法はこれを後押しするものであり、既に施行された「荷主対策の深度化」、「規制の適正化」とともに「標準的な運賃」の3つの施策を一体的に取り組むことで、トラック運送業界の新たな成長性を見出したい。