業界一丸で安全体質強化を

「事業用自動車総合安全プラン2025」が策定された。前回のプラン2020で掲げた行政、事業者、利用者の〝安全トライアングル〟を進化させる。5年内の目標を示す中で、飲酒運転や健康起因など最近の事故傾向への対策が重点施策に盛り込まれ、これらは喫緊課題として強く受け止める必要がある。
重点施策の1つに「原因分析に基づく事故防止対策の立案と関係者の連携による安全体質の強化」がある。各業態の特徴的な対策や個別目標も新たに設けた。事故の件数だけでなく、特徴、傾向を踏まえ掘り下げる。関係者連携による広範な見地からの分析、対策が期待される。
一方、プラン2020の最終年度であった昨年の事故件数は、コロナ禍による需要低下の影響もあろうが対前年比では事業用自動車全体で2割、トラックも13%削減するなど各業界の取り組みの成果が見られた。
トラックは死亡事故件数も11月まで前年を大きく下回る推移を見せたが12月に一気に増えプラン2020目標の200人以下には未達。全体の事故件数もトラックのみ未達だった。有用な対策を見出し業界全体の安全体質強化が求められる。
昨年36件発生した飲酒運転事故は全てトラックだが、国土交通省が5月に再通達を出して以降後半は業界一丸による取り組みの成果が見られ前年に対しては減少した。
飲酒運転についてはプラン2025でも事故ゼロを掲げる。策定にあたっての議論では「いつまでにどのくらい削減するか具体的な数字を示しては」との意見があった。国交省の石田勝利安全政策課長は「事故は努力しても防げないものがある一方、飲酒運転事故は必ず避けられるもの」としゼロ目標を崩さなかった。
今回のプランには点呼の正しいタイミングの周知などより踏み込んだ施策が示されている。事故分析では飲酒は点呼前後に二分されるという。後飲は常習者対策となるが、点呼をしっかり行えば半分は未然に防げる。
今般、運行管理に関して新たに検討会が設けられ、ICTの活用でIT点呼(遠隔点呼)の対象拡大や自動点呼導入への実証などが行われる。機器の技術進展は目覚ましく安全性向上の側面からもスピード感を持って進めてほしい。
こうした動きは非接触、DX(デジタルトランスフォーメ―ション)という物流が求められる新たな施策とも一致する。事故対策も業界がしっかり認識を共有して安全確保に努めたい。