根幹は長時間労働の是正

国土交通省が7月に創設した「トラックGメン」は約2カ月の稼働により、トラック法に基づく荷主などへの「働きかけ」を120件、「要請」を5件実施した。これを〝助走期間〟に11・12月を集中監視月間と位置付け、「働きかけ」、「要請」、そして「勧告・公表」を集中的に展開、一段と監視体制を強化していく。
2019年7月に施行されたこのトラック法の措置は、9月末累計で「働きかけ」205件、「要請」9件を実施。トラックGメン創設後の単月ベースでは、全体で「働きかけ」を8月で57件、9月で63件行ったことになる。これから年末にかけて物量が増える11、12月を集中監視月間としたことで相当なペースで増えそうだ。
「働きかけ」に該当する荷主起因の違反原因行為では長時間の荷待ちが多い。2024年問題への危機感は荷主も共有され課題解決へ物流改善に取り組む一方、現実的には荷主側の違反原因行為の事案が後を絶たない。
集中監視月間の設定は政府が取りまとめた「物流革新緊急パッケージ」に盛り込まれており、関係省庁と連携した迅速な対応で商慣行是正、取引適正化を一気に進めたい。
省庁連携では、厚生労働省が国交省と①荷主情報提供の運用強化、②「標準的な運賃」の周知強化、③トラック法に基づく「働きかけ」の連携強化を図る方針を示した。厚労省は昨年12月に「荷主特別対策チーム」を発足し、荷主に長時間の荷待ちを発生させないよう要請と、改正改善基準告示の周知を行っており、8月末時点で荷主など7641件に配慮要請した実績がある。
国交省も厚労省をはじめ関係省庁の地方実施機関(経済産業局、農政局、労働局)と連携し、荷主への合同ヒアリングを10月から実施しておりまさに国をあげて荷主対策に講じている。
とくに厚労省との連携では荷主への配慮要請時に改正改善告示のほか「標準的な運賃」の周知も併せて行うなど、個別荷主企業へ効果的なアプローチが期待される。施策の実効性を高めるにも、現場の荷主情報の提供が第一である。
厚労省の一連の荷主対策は、改正改善告示の検討の場において荷主都合への対応が焦点の1つとなったのが発端である。過労死につながる長時間労働の是正が根幹にある。
商慣行の見直しは政府の緊急パッケージの柱の1つでもある。何より実運送における長時間労働が是正されなければ前に進まない。