未然防止が人材活用にも

事業用自動車の健康起因事故が高止まりの状況だ。自動車事故報告規則に基づき報告のあった件数では、2021年は前年より2件増え288件、うち3割が交通事故に至っている。国土交通省では策定した各種ガイドライン・マニュアルの周知を図っているが、事業者がこれらを活用して確実に対策を講じるよう促す必要がある。
事故件数の推移をみると、事業者の健康起因事故に対する意識の高まりも報告件数に反映され、18年の363件をピークにここ数年は300件前後となっている。
21年の事故件数のモード別ではトラック110件、タクシー54件、貸切・特定(観光バスなど)11件、乗合(路線バスなど)114件。運転者数約84万人のトラックに対し約8万人の乗合が事故報告件数では上回る。
健康起因事故は重大な事故につながることが多く、社会的に大きな注目を集める。人手不足が深刻化するトラックもこうした事案が起きれば業界全体のイメージも悪くなり雇用環境はより厳しいものになる。
国交省は「事業用自動車総合安全プラン2025」において「原因分析に基づく事故防止対策の立案と関係者の連携による安全体質の強化」を重点施策の1つとし、ここに健康起因事故への対応を盛り込む。これまで健康管理マニュアル、睡眠時無呼吸症候群(SAS)対策マニュアル、脳疾患対策ガイドライン、心疾患対策ガイドラインを策定・改訂し、昨年4月には視野障害マニュアルを策定し周知を進めている。
先のアンケート調査では視野障害以外のマニュアル・ガイドラインの認知度は8割を超え、受診率の必要性の認識もSASは9割、脳・心疾患は8割、視野障害は7割を超える。しかしスクリーニング検査・精密検査費用負担や人員配置の余裕がないことで受診に至っていないケースが多い。
脳疾患ガイドラインに沿って18年度から5年間行ったスクリーニング検査のモデル事業では、早期発見・治療や運転寿命の延長につながる事例を確認した。追跡調査により治療後現場復帰したケースからは未然防止とともに人手不足の解消、人材活用に寄与する。
国交省では健康起因事故対策の23年度事業で、事業者が日常的に取得する運転者の健康状態の情報などについて、事業者が把握すべき項目の調査を新たに行う。その重要性は認識するが、実際に何をやるべきか、より明確に伝えていくことも肝心だ。