早期の復旧・復興に期待

熊本地震による影響が拡大している。被災地に所在する企業にとどまらず、取引を行う多くの企業にも影響が広がりつつある。

同時に、多方面からの支援の輪も拡大しつつある。今後、被災地域の復旧・復興とともに、データによる現状把握は、被災地に所在する企業の1日も早い企業活動の再開や、今後の効果的な復興支援策の策定に不可欠といえるだろう。

民間調査機関の帝国データバンク(TDB)が、自社の持つ2016年3月末時点の企業概要ファイル(約146万社収録)をベースに、被災地に本社が所在する企業1万7208社の取引先(仕入先・販売先)や各地域の産業の集積状況を明らかにした。

TDBの調査によると、被災地に所在する企業の仕入先は全国で1万5911社。このうち被災地所在企業への販売を主力としている企業は4829社で3割を占めている。
また、販売先は1万5754社で、被災地所在企業からの仕入れを主力としている企業数は5108社あった。とくに、被災地を含む九州では4105社と8割超を占める。さらに関東も517社が被災地所在企業からの仕入れを主力としている。

被災地所在企業の再建が遅れるならば、これら仕入先企業の業績に悪影響が及ぶことが懸念され、熊本地震による影響は全国に波及する可能性もある。

とりわけ、製造業に強みを持つ熊本の販売先には中部地域の企業が多い。また、大分県の被災地である別府市や由布市にある企業の取引先は九州エリアの企業が多くなっている。

東日本大震災の時には、被災地所在企業の販売先は新たな仕入先を確保しようと行動した。もし熊本地震の復興が遅れることになれば、同様に被災地所在企業は販売先を失う可能性がある。

こうした点を考えると、震災からの復興をいかに短期間で行うかが、被災地所在企業再建のカギを握っている。短期間で復興できれば、販売先を維持でき、販売先にとっても継続的な仕入れを確保できる。

被災地所在企業の復活には、早期の復旧・復興が欠かせない。その政策の立案・実施には、企業や地域の実情に沿ったきめ細かな支援が必要だ。

被災地に所在する企業の販売先・仕入先との取引継続は、今後の復興に向けた大きなポイントだ。

救援物資輸送だけでなく、復旧・復興でも物流の役割に期待したい。