日本発「求荷求車」に期待

タコグラフなど、商用車向け運行管理機器の老舗メーカー、矢崎エナジーシステムと求荷求車システムを運営するトラボックス、そしてタイ国でテレマティクスシステム事業を展開する、DTCエンタープライズの3社が手を組んで、タイ初のトラック版ウーバーライゼーション(求荷求車サービス)を提供していくことが決まった。

経済発展政策を推し進めるタイ・バンコクを中心にサービスを投入し、将来的にアセアン各国へ事業展開する際の足がかりと位置づけた。

ウーバーと聞くと、真っ先にタクシーの配車システムを思い起こすだろう。米国ウーバー社が一般乗用車の空いている時間を利用して人を運ぶ仕組みを開発し、新たな市場を開拓した。

実はウーバーライゼーションの先進国は日本だ。インターネットなどを活用して、トラック運送会社同士のネットワークを構築し、求荷求車システムを開始した。草分け的なのが全日本トラック協会が開発し、日本貨物運送協同組合連合会が運営するWebKITと、民間企業のトラボックス(吉岡泰一郎社長)だ。

トラボックスは事業開始から約20年経つ。ウェブ上に示された荷物情報を見て、会員事業者は帰り便の荷物などを確保。トラックを空車にさせず、効率的に積載稼働できる便利さで普及が進んだ。

そのお家芸ともいえる求荷求車システムのノウハウが、海を渡り経済発展めざすタイで活かされる。

トラボックスはかつて中国進出をめざした時期があった。この時は反日感情が高まり断念したが、今回満を持して初の海外進出となった。

トラック、タクシーに限らずウーバーの流れは他の分野にも波及するだろう。物流の分野でも今後他社の追随が予想される。ただ20年培った技術の積み重ねは、容易に真似できることではない、と共同会見で吉岡社長は強調。「運送会社のニーズを把握し、新サービスの開発や既存サービスの改善に力を注いできた」と自信を覗かせた。

タイ国ではモータリゼーションが進んでいる。当然モノの動きも活発だ。それに伴い利用者が求めるニーズも高度化してきている。

いま、タイの物流分野で障害となっているのは、配送遅延や紛失、破損といった輸送品質だ。3社は今後、それぞれの得意分野を生かしつつ、課題が解決できるツールとして、求荷求車システムの定着を図っていく考えだ。

この先、「キュウカキュウシャ」が一般用語になるくらい、タイに根づくことを期待したい。