新たな配送需要となるか

東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の中小トラック運送事業者23社が手を組んで協同組合を立ち上げることになった。ラストワンマイル協同組合(ラストワンマイル/東京・府中市)が窓口となり、通販貨物の配送事業に取り組む。運転者不足を抱える大手宅配事業者などがカバーしきれない貨物の受け皿をめざす。

設立への背景となった運転者不足は一段と強まっている。遊んでいるトラックが出てきたと嘆く事業者の声が多くなってきた。

募集しても応じてくれず、採用しても定着しないからだ。東京・江東区でトレーラ輸送を行う企業の幹部は「期待していた若手が、自宅に近い会社に勤めたいとの理由で辞めた」と残念がっていた。どうやら残業を敬遠してのことらしい。

ただ、運送事業者もいつまでも人手不足対策に手をこまねいているわけではなく、積極的な行動を開始している。

その一つが適正運賃収受への取り組みだ。従業員の賃金アップなど待遇を改善し、定着を図ろうと運送事業者は懸命だ。

東京都トラック運送事業協同組合連合会が1月に組合員を対象に調査した2017年8月~18年1月までの運賃動向アンケートでは、運賃交渉した事業者の約5割が「値上げできた」と回答。

さらに日通総合研究所が先月公表した短観では、一般トラックの「運賃動向指数」が今年1~3月のプラス24から4~6月は7ポイント上昇し、プラス31の見通しが示された。運送事業者らの取り組みの表れだと受け止めたい。

ラストワンマイル協同組合は、企業が保有する拠点などの経営資源を組み合わせ、独自の配送インフラを構築し、そこに通販貨物を乗せることを思い付いた。そのインフラは人手確保の障害だった長時間労働を解消できるかも知れない。

この配送システムは、依頼主(荷主)が貨物を組合の拠点である仕分けセンターまたは配送センターへと持ち込み、そこから組合員が消費者に配送する仕組み。荷主が、荷物の受付や集荷、仕分けなどを行うので、運転者は荷待ちや付帯業務から解放される。従来の手間が省けた分、低運賃も実現した。

理事長の志村直純氏(デリバリーサービス社長)は「人手不足で疲弊し、魅力を失った業界のイメージアップを図りたい」と抱負を語る。荷主との連携で独自の配送インフラを構築したことに加え、運転者の労働環境改善にも寄与するというのだ。

この中小企業の取り組みがうまくいくのか、今後に注目したい。