接点強化で需要掘り起こし

昨年度の宅配大手の取扱個数実績は、ヤマトホールディングスが前年度比2・1%減(宅品便3商品)、SGホールディングスが2・7%減(デリバリー事業)、日本郵便が3・0%増(ゆうパック)だった。日本郵便は3年ぶりの前年比プラスとなったが、ゆうパケットを除いたゆうパック単体では1・3%減となり、大手の実績をみると宅配需要は低調に推移した。コロナ禍の巣ごもり需要から急拡大したEC市場は、消費行動のリアル回帰により伸びが鈍化し、さらに実質賃金の減少を背景とした消費低迷が影響した。コロナ特需の反動減やリアル回帰は概ね一巡したようだが、個人消費低迷の影響が続く。とくにピークシーズンの11、12月が低調であったほか、第4四半期(1-3月)も基調は変わらない。EC市場自体は裾野が広がっており、現状の消費動向に左右されながらも宅配需要そのものは底堅い。今年度の取扱個数予想ではヤマトHDは4月が1・0%増とプラスを確保したが、第1四半期はまだ厳しいとみる。下期に回復し通年では宅配便3商品で6・4%増を見込んでいる。SGHDも一定の需要回復を織り込み通年0・7%増とプラスを予想する。SGHDの今期業績予想の売上高・利益は中期経営計画(22-24年度)の最終年度に掲げた目標には未達となる。宅配便はインフレの進行など事業環境の変化に起因するところが大きいが、適正運賃収受と生産性向上の継続的な取り組みが必要としている。宅配便の平均単価をみると、SGHDは、昨年度は5円増の648円だったが、今年度はさらに14円増の662円を設定している。4月から届出運賃を平均7%引き上げている。ヤマトHDは昨年度実績で宅配便3商品が18円増の721円だった。プライシングの適正化に大口法人顧客との新規取引拡大により、宅配便収入は増加した。今年度は4円増の725円を設定する。ヤマトHDの昨年度の取扱個数は法人領域(大口法人)が1・5%増だったが、リテール領域(個人・小口法人)が5・8%減だった。対策として各地域の基盤顧客、小口法人に対する営業接点を強化する。集配拠点の集約を踏まえた受付接点の設計・展開を図るという。個人消費の先行きは不透明だが、宅配大手は幅広い顧客接点機会を有する強みがあり、需要を掘り起こす営業政策が注視される。