持続可能へ「標準的な運賃」

トラック運送事業者による「標準的な運賃」の届出割合は49・9%(8月末)と全体ではまだまだ浸透していない。18日に行われた省庁連携による「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」でも運送事業者、荷主へのさらなる理解、活用を求める声が相次いだ。
「標準的な運賃」は2020年4月の告示から2年半が経過。24年3月までの時限措置で、〝延長・恒久化〟の議論が進められるにしても制度がしっかり活用されていることが前提で、届出率はその目安になる。この間のコロナ感染拡大に燃料高騰と荷主との交渉も難しい状況だが、エッセンシャル事業の物流機能を維持するためにも交渉に動き、届出が必要である。
トラック協会ベースでは7割超の届出率で、とくに届出率の高いエリアは協会・支部が果敢に呼び掛け実績となっている。まず届出の行為を確実に行うことが肝要だ。
国土交通省が重視するのはそのプロセスにある。まず制度を理解し、自社で運賃を計算、荷主と交渉した上で届出る。
今年3月に国交省が行った標準的な運賃に関する実態調査結果について、日野祥英貨物課長によると、ステップ1の理解はある程度進むが、とくに重視するステップ2の「標準的な運賃を考慮した自社運賃の原価計算」の実施済みは32%で取り組みが進んでいないとしている。
中央協議会でもこの結果が示され、委員からは第1ステップにおいても「金額や原価計算の方法などすべて理解」33%、「金額のみ理解」43%であり、「そもそも原価計算を理解せず荷主と交渉はできない」との指摘があった。相談窓口やセミナーなど施策を講じる中でも小規模事業者が多く浸透が進まないのが現実だ。
届出率を上げることについても委員からは「発着荷主への周知」や、「届出率が低いエリアへの対応」など聞かれるが、これらは前回の会合でも同様な指摘があり、進展していないことも伺える。
「標準的な運賃」はトラック事業者の荷主に対する交渉力が弱いことや、2024年問題を踏まえ、
法令を遵守して持続的に事業を行う参考となる運賃を示すものである。
届出行為そのものと、標準的な運賃を考慮した自社運賃の原価計算。順序の違いはあれいずれにしても実行しなければ競争力は低下する。妙策を見出すというより、その趣旨を再認識し運送事業者、荷主への理解、周知を徹底させるしかない。