持続可能な物流へ

2019年はトラック運送業の働き方改革が大きく前進した1年だった。
改正貨物自動車運送事業法において、「荷主対策の深度化」「規制の適正化」「事業者が遵守すべき事項の明確化」が施行され、「標準的な運賃の告示制度の導入」は年度内の告示へ作業が進められている。
「ホワイト物流」推進運動の立ち上げも、トラック運送事業者の労働環境改善へ大きなムーブメントを起こした。国が上場企業と都道府県主要企業の計約6300社の代表者に要請し、11月末現在で658社が賛同表明している。取引適正化が「待ったなし」との状況において、荷主の理解・協力へ継続的な呼びかけが有効である。
物流関連事業者の業績をみると、米中貿易摩擦などによる製造業を中心とした景況悪化が荷動きに影響しているものの、運賃単価は堅調に推移し、着実に適正運賃収受が進行している。
国土交通省の一見勝之自動車局長は「人が集まらず荷物が運べない状況を背景に、運賃は少しずつ上がってきている」との感触を示す。荷主側が運送業の深刻な人手不足を自らの物流危機ととらえる気運が高まっている。
運輸労連の難波淳介中央執行委員長は6日に行われたセミナーのあいさつで「ドライバー不足は事業者以上に荷主も深刻な事態で、物流維持へ値上げを受け入れざるを得ない状況」と指摘、「賃金と労働環境改善の原資は運賃しかない」と事業者は自信を持って適正運賃収受の流れを継続していく必要性を強調する。
改善基準告示の見直しへの議論も本格化する。
厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会に「自動車運転者労働時間等専門委員会」(仮称)が設置され、トラックでは公労使各2人計6人の委員で構成、国交省もオブザーバーで入る方向である。安全第一に現場の実態を反映させた議論に期待したい。
オリンピックイヤーとなる2020年。流通経済大のアンケート調査では物流企業の9割、荷主企業の8割が物流業務に影響を受けるとの回答だが、TDM対策は9月調査時点で2割にとどまる。
対策実行も多くは自社単独では難しく、物流、発着荷主とも双方の理解・協力が不可欠との認識だ。
一方でこの大会期間中の取り組みを、今後の物流の生産性向上へ継続したいとの意向も見受けられる。企業・業種の枠組みを超え、サプライチェーンの全体最適化を促す契機でもある。
物流危機から持続可能な物流に向けた新たな潮流に目を向けたい。