影響長期化で格差拡大懸念

全国中小企業団体中央会(全国中央会)による3月の中小企業月次景況調査では、運輸業の主要指標は3カ月ぶりに改善したが依然として低水準にある。
人流の回復や値上げを睨んだ年度末需要もあり全体の景況感は持ち直したようだ。価格転嫁交渉は一部で進むものの、値上げが相次ぎ多くの事業者は対応に苦慮する。ウクライナ情勢、上海のロックダウンなどコロナ禍の長期化もあり、中小事業者の今後の資金繰りや人材確保など先行き不安感が根強い。
運輸業は販売価格、取引条件、資金繰り各指標は悪化した。価格転嫁は進まず、コスト圧力の影響を直接的に受ける。「色々な値上のニュースがあり運賃も上げてもらいたい」と悲痛な声が聞かれる。
コロナ禍の事業環境で小規模事業者が依然として厳しい経営を余儀なくされている。
全日本トラック協会がまとめた2020年度決算(19年10月~21年8月)版の経営分析報告書からも、小規模事業者の業績は回復せず、規模による格差が大きい。経済活動の再開で売上高は回復基調だが、利益の格差が目につく。車両10台以下では62%が営業赤字、46%が経常赤字だ。
同分析で全体平均の営業費用項目(運送費)をみると、売上高に対する人件費が39・8%(前年度38・8%)に上昇。輸送量の急回復で大きくなった人件費負担がとくに小規模事業者の収益を圧迫した格好だ。
一方、売上高に対する燃料油脂費は20年度決算で燃料価格下落から12・0%(同13・5%)に下げた。これが21年度は上昇すると思われる。また経常利益率の改善幅が営業利益率を上回るが、営業外収入にコロナ関連の各種助成金、補助金収入が計上されたためで、これら支援効果の継続性も不透明だ。
上場企業の3月期決算発表がスタートした。物流業界大手も燃料コストなど外的要因の影響を受けるが、物量の増販効果が吸収し総じて増収増益基調にある。
燃料高騰の価格転嫁状況やコロナの影響度は業種・業界で開きがあり、物流業界においても事業規模による格差が生じる。影響の長期化でその格差拡大が懸念される。
政府は原油価格・物価高騰等総合緊急対策を決め、岸田首相は「価格の高騰、物流の不安定化は予断を許さず、先手先手で対応する」との姿勢を示す。物流業界は中小異業者が多く、その機能維持には即効性がなければ先行き不安感は拭えない。