強い危機意識の共有を
トラックドライバーは10年後に28万人不足すると鉄道貨物協会が試算した。労働時間に対する規制強化など環境変化を受けて算出したもので、ドライバー不足の深刻度は増している。
調査によると、足元の17年度も10・3万人の不足が発生。不足数は20年度14・4万人、25年度20・8万人、28年度27・8万人に拡大する見通しだ。
鉄貨協は13年度にトラックドライバー需給の中・長期見通し調査を行ったが、景気持ち直しなどアベノミクスの影響、労働時間に対する規制強化を受け算出を見直したところ、ドライバー不足がより深刻な状況であることが分かった。
人手不足はどの業種も抱える問題だが、物流業は喫緊の経営課題である。
帝国データバンクの調査では、運輸・倉庫業の「正社員雇用過不足指標」は今年に入っても64~66(50が標準)と不足感は他業種の群を抜く。
全日本トラック協会の調査では1~3月の労働力不足感(不足、やや不足)は69・8%、4~6月見通しは74%に高まり、約7割の事業者がドライバー不足に直面している。
鉄貨協では今回、物流事業者へのアンケート調査も行い、今後さらにドライバー確保難となれば、約6割が「鉄道や海運など他モードの利用比率を上げる」を、約半数が「ドライバーの労働環境の改善」「荷主企業に荷待ち時間の短縮などを要請」を対応策にあげている。
モーダルシフトなど既に取り組み好事例もみられるが、人手不足の状況もさらにスピードを増すことを前提とすると一層の対策強化が求められる。
とりわけ荷主への要請については、荷主側の理解・協力が不可欠である。改正事業法施行、ホワイト物流推進運動をはじめ国の施策が動く中で、ライフラインである物流を維持する上で、ドライバー不足の強い危機意識を広く共有する働きかけが必要だ。
同時にトラック運送業界全体の発信力も問われる。
鉄貨協の調査で、ドライバーの年齢層別による供給量をみると、50歳未満はすべて減少する一方、50歳以上は増加する見通しだ。人手不足とともに高齢化も進む。高齢ドライバーが退職した後に、若いドライバーを確保しなければならないが、それが十分にできていない。
足元の人手不足もさることながら、次代を担う多くの人材を引き寄せるような環境改善と、業界のPR力がなければ人手不足は恒久的なものになる。