実践的、分かりやすい提言を

事業用自動車事故調査委員会が発足から5年間の総括を取りまとめた。これまでの事故を分析、類型化し再発防止策の提言や取り組み状況を検証の上で今後の事故調のあり方を示した。報告書1つひとつは分量も多く難解な印象も受けるが、確実な再発防止には詳細を記録し事後的な振り返りやフォローアップが重要であり、その役割の大きさを再認識する。
 事故調は2014年6月の設立後、労働科学、健康医学、人間工学、自動車工学、道路工学、交通工学、社会学、法学といった幅広い見地から分析し、その結果や再発防止策を報告書として公表している。昨年7月までの5年間で公表数は37件、うち貨物は18件となっている。
 この37件をまとめた分析結果では、運行管理不適が全ての事故の要因であることや、教育・指導不足が全体の約9割、無理な運行指示が約8割を占め、運転技術の関係も多いなど、共通する要因があらためて浮き彫りとなった。また運転者の年齢は50代以上が半数近くを占めている。
 大きく5つの類型に分類したことで事故要因の傾向や再発防止策の重点もより鮮明になった。
 飲酒運転や車両故障に起因する事故も各1件選定したが、これら事故が及ぼす社会的影響は大きい。飲酒事故はトラック運手者のフェリー乗船中の飲酒が常態化していた事例だ。要因、再発防止策をしっかり心に留める必要がある。
 今後の方向性では引き続き客観的で質の高い事故原因の究明とともに、実効性の高い再発防止策の提言に力点を置く。
 事故分析については当事者への調査の深掘りだけでなく、必要に応じて業界団体や同業他社にもヒアリング、アンケートを行っていく考えだ。当事者で得られた情報の妥当性を検証するため、調査の対象を広げて精緻な分析が行われ、提言内容のより高い実効性が期待できる。
 再発防止策の提言では網羅的な内容にこだわらず「優先順位の高い内容を中心にメリハリを利かせるなど柔軟な対応を行っていく」とも記している。幅広い見地から多面的、科学的な分析を行っているが、網羅的な内容では事業者が優先的に講じるべき対策が分かりにくいなどの意見もあるという。
 事業者側も事故調の再発防止策の提言を踏まえた対策がとられているかをあらためて検証する必要がある。そのためにも事業者にとって実践的で分かりやすい内容が求められる。