実態把握し適正な環境整備
軽貨物運送事業を安定的に維持するため、国土交通省が「貨物軽自動車運送事業適正化協議会」を立ち上げた。軽貨物は個人事業者が多く実態がつかみ切れない。「法令に係る情報を充分に周知する仕組みがしっかりできていない」(堀内丈太郎自動車局長)とし、まず荷主や元請事業者などと情報共有化を図る。
宅配貨物のラストワンマイル輸送で軽貨物の需要拡大が続く一方、事故件数は増加傾向だ。この5年で事業用軽貨物の死亡・重傷事故件数は8割増。とりわけ個人事業主における点呼や車両の点検整備にかかる意識が低いとされる。
国交省では昨年10月3日付通達で「事業用軽貨物自動車の事故防止に係る留意事項について」を発出し、点呼やアルコールチェックなど運行管理の実施、安全運転の遵守、点検整備について周知徹底を図っている。
併せて改正改善基準告示では軽貨物の個人事業者にも適用されることや、改正貨物事業法の働きかけなど適正な取引環境には依頼主である荷主、元請の協力を得た周知が必要だ。
発足した協議会はこれらを背景に軽貨物運送事業の荷主、元請けやプラットフォームの各大手関係者が出席。官民が一堂に会し対応策の調整や情報共有、意見交換などの場を設けたものだ。EC市場はさらなる拡大が見込まれ、より確実な安全確保と事業適正化への対策が急がれる。
国交省では協議会の開催と併せて軽貨物運送事業者への法令遵守と働きかけの周知を徹底する。荷主、元請から長時間労働を強いられ法令遵守ができない場合は働きかけの対象となることや、相談窓口の存在などポスター・リーフレットを作成し広く周知を図る。
軽貨物運送事業者は事業開始の届出後、事業計画に変更がない限り国の窓口を訪れる機会が生じず、一般貨物事業者と違い、国への事業報告の提出義務もないことから事業実態が不透明な状況だ。
このことから国交省は軽貨物1万者の個人事業主に対し実態調査を行い年度内にも結果を取りまとめる。事業形態(専業・副業)、取引相手、取扱量に点呼や点検整備、荷主の違反原因行為の有無など多岐な項目で実施する。
軽貨物運送は昨年10月には軽乗用車の使用も認められる規制緩和が行われ、新規参入のハードルは下がる一方、安全や輸送品質の問題も指摘される。
取り巻く環境が大きく変化する中でしっかりと実態を把握し、措置を講じていく必要がある。