安定輸送へ抜本的対策を

燃料価格の高止まりに、コロナ感染症の長期化の影響もあり、トラック運送業の景況感は再び下降局面にある。全日本トラック協会がまとめた10-12月期の景況感判断指数は、7-9月期から改善したものの小幅であり、1-3月期は悪化する見通しだ。
1-3月期の予想指数はマイナス36・1と、昨年1-3月期(マイナス41・0)に近い。燃料価格の高止まりを織り込む。一般景況は緩やかながらも回復基調とされるが、燃料高騰とコロナ感染拡大による影響が長期化しているのが実態である。
物流企業の4-12月期決算が出揃ったが、航空・海上輸送スペースの供給不足による原価・販売価格の上昇や、国内では成長が続くEC市場など活況が続く一方、収益面では物量回復によるコスト増に、燃料高騰も大きく影響してきた。直近の10-12月期では伸びが鈍化し収益が悪化したところもあり、通期予想の上方修正も1部にとどまる。コロナの状況も含め慎重に見ている。
とくに燃料高騰が長びくと、中小零細が多いトラック運送事業者の経営に大きな打撃となる。
価格転嫁はトラック運送業が最も進んでいない。中小企業庁による価格交渉促進月間フォローアップ調査では、価格転嫁の達成状況、価格交渉の協議状況ともトラック運送業が最も低い水準だ。また、帝国データバンク(TDB)の1月景気動向調査で、仕入れ単価指数と販売単価指数の乖離は全51業種中、最も大きいのが運輸・倉庫業であり、「価格転嫁は全くできていない」との回答も全体36・3%に対し、運輸・倉庫業は64・8%と最多である。こうしたことが企業業績で先行き大きな下振れ要因になる。
トラックは倒産件数が増加傾向にある。この間、コロナ関連の資金繰り支援効果もあり小康状態が続いていたが底打ち、増勢に転じる気配だ。TDBでは「倒産件数は燃料費価格に連動する傾向がある」とし今後も倒産が増加する可能性を示唆している。
国は燃料高騰に対し、激変緩和措置をはじめ様ざまな策を講じるが状況は好転していない。先の中企庁の調査からも、トラック運送業は長年の商慣行が大きなネックとなっており、抜本的対策が急がれる。
全ト協は燃料サーチャージ制の導入と標準的な運賃の導入について、国土交通省との連名で荷主企業約4万5000社に文書、パンフレットを送付し周知を徹底させていく。荷主の理解なくして安定した輸送力は確保できない。