安全にはコストがかかる

国土交通省は今週金曜日(19日)、トラックの取引環境・労働時間改善中央協議会の第3回会合を開く。藤井直樹自動車局長は10日の定例会見で、労働時間調査の結果報告とともに適正運賃収受をテーマに議論を進めていく考えを示した。

この背景には、先月15日に長野県軽井沢町で発生したスキーバス事故がある。国交省では、4年前の関越道バス事故を契機に抜本的な対策を実施したにも関わらず、依然として法を守らない悪質な事業者が存在し、しかも法定運賃の下限を大幅に下回る安い運賃で運行を請け負い、再び大事故に至ったことを重く受け止めている。

藤井自動車局長は「旅客・貨物を問わず、運送事業者が規制・安全にかかる投資や、ドライバーの労働条件に反映できるような賃金を支払える運賃を収受することが、過労運転の防止、安全運行につながっていく」とドライバーの賃金改善、長時間労働の解消には適正運賃収受が必要であることを強調した。

トラック運送業界では、軽井沢でのスキーバス事故について「対岸の火事ではない。これを機にトラックの需給と運賃についても規制強化すべきだ」との声もあがっている。

労働団体も「安全運行の阻害要因ともなる安すぎる運賃・賃金の是正」や「取引環境改善」に対し、「国は優先的に取り組むべき」と主張している。

トラック運送業界は中小事業者が多く、BtoB取引であり、荷主(=旅行会社)の立場が強いなど、貸切バス業界と経営環境が似ている。このため、需給規制や目安となる標準運賃の設定を望む声が労使を含む業界全体で高まっているようだ。

従来、国交省の検討会などでは、参入規制や運賃などの規制強化は論じられにくく、門前払いされてきた経緯がある。取引環境・労働時間改善中央協議会では、是非論じてもらいたい。

藤井自動車局長が指摘するように、法令を順守し、安全運行を確保するためには一定のコストがかかる。にも関わらず、低運賃、長時間労働が常態化している。

中央協議会の第3回会合で、国交省には、トラックでも「安全を担保するには、コストがかかる」ことをしっかり訴えて、荷主をはじめ関係者の理解が得られるよう議論を進めてほしい。

競争が激化する中で、コストを無視し「1円でも安ければよい」という考え方だけでは、改善しまい。

改めて「安全にはコストがかかる」ということを、協議会での共通認識としてもらいたい。