壮大な国民運動に期待

政府は5月30日、自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議(議長=野上浩太郎内閣官房副長官)の第4回会合を首相官邸で開き、自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画を決めた。

トラック、バス、タクシーの運転者は、全職業平均と比べ、年間の労働時間が1~2割長いにもかかわらず、年収は1~3割低いのが実情だ。2017年度の自動車運転者の有効求人倍率は2・81倍と運転者不足が深刻で、物流の停滞や生活交通路線の廃止・減便などが懸念されている。

政府が重要法案と位置づける働き方改革関連法案は、与党と日本維新の会などの賛成により衆院を通過しており、今国会での成立が確実視されている。

自動車運転業務は、一般産業に遅れること5年、2024年4月1日から罰則付きの時間外労働の上限規制が適用される予定で、規制時間は一般産業が年間720時間までとされたのに対し、自動車運転業務は年960時間以内とされた。

政府の計画は、その5年間の猶予の間に、すべての運転者が規制を守れる状態にすることが最終目標で『「運び方改革」と安全・安心・安定(3A)の職業運転者の実現』が副題としてつけられている。

昨夏発表された、「直ちに取り組む施策」63施策のほかに25施策を加え、合計88施策としたもので、計画の実効性を担保するため、労働時間、賃金、運転者の需給、運転者の構成などをモニタリングし、必要な見直しを行う考えだ。

施策の目玉は、何といっても「ホワイト物流」実現国民運動だ。「ホワイト経営」の見える化との2本立ての施策だ。「ホワイト経営」の見える化は、働き方改革に前向きなトラック運送事業者を認証し、取引先や就職先として優位性を持たせる。近く検討会を立ち上げ、年内に結論を得て2019年度からの制度運用をめざしている。

これに対し、「ホワイト物流」は日本経済に必要な物流機能を維持・確保していくための国民運動だ。我が国の自動車運送の現場を、女性や高齢者でも活躍できる、より「ホワイト」な労働環境に変えていき、必要な運送サービスを安定的に確保しようというわけだ。

発荷主と着荷主、元請け物流事業者などの関係者が、運転者に過度の負担を与えてしまっていないか、必要となるトラック稼働台数を節減できないかなどを点検し、宣言することになろう。壮大な国民運動となることを期待している。