増税後の消費動向を注視

消費税率引き上げをはじめ景気低迷の懸念材料は多い。下期以降売り上げ動向、景況調査各指標の落ち込みが目につく。貿易摩擦や自然災害など様々な外的要因が重なる中で、消費マインドがどう動くか注視する必要がある。
全国中小企業団体中央会(全国中央会)が発表した10月の中小企業景況調査では、業種全体で9指標(DI)すべてが悪化。中でも売上高DIが約20ポイントと落ち込みが大きい。消費増税、自然災害や人手不足、米中貿易摩擦などが業況に直接影響を受けている。
運輸業もこれら荷動きに影響し、販売価格DIを除きすべて悪化。主要3指標(景況、売上高、収益状況)がマイナス30前後で、景況、売上高は3年前の16年7、8月以来の低水準という状況である。
全日本トラック協会の景況感見通では、10-12月期はマイナス43・4と想定しており、マイナス40超は同じく3年前の16年4-6月期(マイナス40・7)以来となる。
小売業の10月売上高では、消費増税に伴うキャッシュレス還元から客単価が上昇したコンビニエンスストアを除き、百貨店、スーパーとも来店客数が減少、消費税率引き上げによる駆け込み需要の反動減などで前年実績を大きく割った。
とくに百貨店は衣料品や身の回り品が2割減、美術・宝飾・貴金属が3割減と高額品が軒並み大きく落ち込んだ。スーパーも衣料品が15%減となっている。
宅配便大手3社の10月実績を見ても前年を下回った。下期は増税の影響も織り込み済みでほぼ横ばいを想定するが、先行きの不透明感は増す。
全国中央会では「10月は消費増税による影響は少ないといわれていたが、増税前の9月と比べると反動減の影響が見られる」と想定以上の悪化が伺える。増税による消費の回復が遅くなるほど、企業の業績も厳しさを増してくる。
運輸業の経営環境は、燃料価格はピークから下がったものの、人手不足に働き方改革への対応、コンプライアンス強化など経費負担増が経営を圧迫する状況が続いている。
その一方で、サプライチェーン全体で効率化を進めなければ「ものが運べなくなる」と企業の物流改善への意識も強まっている。
消費動向の荷動きへの影響を注視しながらも、この物流改善の流れは景況に左右されるものではない。こうした時こそ適正運賃収受を着実に進め、より強い基盤づくりに目を向けたい。
この流れを止めてはならない。