増える健康起因事故
事業用自動車の健康起因事故が増えている。
自動車事故報告規則に基づき、報告があった件数は、健康起因事故に対する事業者の意識の高まり等を反映し、昨年1年間では304件となり、調査を開始した2001年以降で最多となった。
このうち、運転中(信号待ち、乗降扱い中を含む)に、意識障害等により、運転操作が不能となったものは88件となり、これも過去最高を記録した。
304件を業種別に見てみると、乗合バスの143件(32%増)が件数の多さで目立つが、これは業務の特性上、定時性を確保する必要があり、運転者をすぐに交替させるためだ。乗合バス143件の内訳を見ると、衝突・接触がなかったもの(乗務の中断等)が134件を占める。乗合バスは、毎年この傾向が強い。
一方、トラックは昨年1年間の報告件数が75件で、前年比36%増と増えている。一昨年が55件で、その前の年が35件であり、この3年間で倍増している。
昨年の75件のうち、衝突・接触がなかったものが35件と最も多いが、衝突・接触を伴うもので、運転者以外に死傷者が生じていないものが34件、同じく運転者以外に死傷者が生じたものも6件発生している。
切り口を変えて、運転中に運転操作が不能となったものは39件で、乗合バス10件やタクシー36件より多い。
88件のうち、35%に当たる31件が脳疾患によるもので、心臓疾患は20%に当たる18件だ。トラックの39件についてみると、脳疾患が16件と全体の41%を占め、心臓疾患が28%(11件)だ。
トラックで脳疾患が占める割合は、一昨年22%(7件)だったため、4割というのは昨年だけのことかもしれないが、タクシーでも増えている。
この脳疾患について、国土交通省では、早ければ年内にもガイドラインを策定し、くも膜下出血や脳梗塞などの脳血管疾患について、健康状態を把握するための具体的手順を記載するほか、健診の結果必要となる精密検査や症状に合わせた適切な勤務形態などについてわかりやすく記載し、事業者が取り組みやすくしたい考えだ。
ただ、脳ドックの場合で5~6万円、簡易なMRI検査でも2~3万円かかるとされる費用の高さが普及のネックとなる。
トラック協会などの補助金を含め、低廉な価格でスクリーニング検査を受診できるようになることを望みたい。