商取引慣行是正が前提に

2040年を目標とした物流のあるべき将来像として、「フィジカルインターネット」(PI)の実現に向けたロードマップ案が示された。実現した場合のパフォーマンスの指標として、経済効果や温室効果ガス削減効果を提示した。物流危機を克服し、物流が産業競争力の源泉となる道筋を描く。
経済産業省、国土交通省が事務局となり、物流、荷主団体、学識経験者による会合が昨年10月に発足、9日の第5回会合で事務局が案を示した。これまでの議論で具体的項目と、ゴールイメージ、40年までの進捗状況など検討、確認してきた。
指標については前回の会合でトラックの積載効率(現状40%以下を40年80%)を提示したが、経済効果としてPIの形成過程である30年で7・5~10・2兆円、PIが完成した40年には11・9~17・8兆円を掲げた。
これらは営業用貨物自動車の物流需給バランスや、供給制約による陸上運送業GDPの押し下げ影響推計から試算したもので、いわば物流危機が回避されることでそれだけの効果が生み出される。
イノベーションや起業、システムの輸出、貿易量の拡大も考慮すればさらに上回るとの見方だ。
また、消費者情報・需要予測を起点にサプライチェーンを全体最適化する「デマンドウェブ」の実現では、例えば事業者系食品ロスが30年度までに 00年度比半減など、PIが様ざまな価値を実現する可能性も強調する。
これをいかに実行するか。同日の会合では「どこが標準化のリーダシップをとるかを明確に」といった意見や、物流コストのとらえ方など議論があった。
SIPスマート物流や官民物流標準化懇談会、また同会合にも業種別のワーキンググループがある。ロードマップ案にはこれら連携が盛り込まれているが、どこが主体的になるかより分かりやすい提示が必要だ。
コストに関して、トラック運送業界としては物流コスト低減の視点ではなく、生産性向上がドライバーの待遇改善になる方向を示したい。
垂直統合項目のロードマップ解説では「30 年度までに商取引慣行で物流コストを可視化しやすくし、リードタイムの延長等、物流事業者の作業負荷を軽減するよう是正」としている。
商慣行の是正なくしては描いた物流による新たな成長性は見出せない。物流、中小事業者にしわ寄せが及ばない構造転換を強く促すものとして期待したい。