取引適正化へ情報提供を
公正取引委員会は荷主と物流事業者との取引に関する調査を継続的に行っている。このほど発表した昨年度の調査では、価格転嫁拒否が疑われる事案に立ち入り調査を行ったほか、注意喚起送付先の業種内訳を細かく公表した。関係業界へ強く周知徹底をさせていく
調査ではこれまでの注意喚起文書送付先の荷主業種別が製造業、卸売業、小売業など大まかであったのに対し、今回はこれらの中でそれぞれ件数の多い業種を公表。日本標準産業分類(中分類)で示しており、当該業界や関係先に対して未然防止へ一段の周知を図る。
注意喚起先の行為類型は例年と大きくは変わらないが、「代金の支払遅延」が161件、21・8%と前回(129件、17・6%)より増え、「買いたたき」も26件、3・5%と前回(21件、2・9%)より増えている。
買いたたきは「他に低価格で運送する物流事業者が存在し、取引先変更の可能性がある旨通知、引上げに応じない」(窯業・土石製品製造業)、「契約金額の交渉の要望を門前払いし、40~50年前に契約した金額を継続して据え置き」(設備工事業)といったもの。燃料高騰は荷主側も確かに厳しいが、依然として悪しき商慣習がまかり通る現実がある。
昨年末に取りまとめられた「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」を踏まえ、省庁連携による転嫁対策、取引適正化の動きが加速する。
公取委は1月に下請法の運用基準を改正し、「買いたたき」行為を明確化した。価格転嫁円滑化スキームを通じて関係省庁と連携しより踏み込んだ対応をとる。中小企業庁とともに、下請法処置実績等の業種別分析結果を公表し、法違反が多く認められる業種には自主点検を要請する。下請法処置件数の21年度速報値では「買いたたき」で道路貨物運送が最も多いことが確認されている。
また、公取委では独禁法上の優越的地位の濫用に関する緊急調査について、道路貨物運送業含む22の業種を選定しており、6月にも10万社程度に書面調査を行う。
公取委・中企庁のホームページには違反行為情報提供フォームが設置されており、匿名の情報提供が可能だ。
燃料高騰による価格転嫁が進まない厳しい状況が中小零細事業者の経営を圧迫する中で、こうした動きは大きな後ろ盾になる。物流事業者もしっかりと状況を把握するとともに、国や関係先への情報提供に努めたい。