取引適正化へしっかり交渉

事業規模78・9兆円の「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」には経済を自律的な成長軌道に乗せる方策が盛り込まれるが、足元の供給制約や燃料高騰といった下振れリスクへの適切な対応が急務だ。
経済対策にはエネルギー価格高騰に対しトラックをはじめ影響を受ける業界の経営安定化施策を着実に行うとし、相談窓口の設置や資金繰り対策、取引適正化への配慮要請など中小企業支援の方策を示している。
先行き懸念が払拭されなければ前向きな施策に踏み込めない。25日の自民党トラック議連総会で全日本トラック協会の坂本克己会長が「中小零細が90%以上の業界では、差し当たっての今日、明日が厳しい」と理解を求めた。喫緊課題は適正運賃の収受であり、燃料価格上昇分の価格転嫁が進むよう一段の対策が望まれる。
取引適正化については、こうした状況も踏まえ、公正取引委員会が下請取引の監督体制の強化に踏み切った。燃料高騰で下請事業者から値上げを求められた元請事業者が一方的に単価を据え置けば「買いたたき」に該当する恐れがあるとし、新たにQ&Aを作成しウェブサイトに掲載した。
国土交通省の今般の荷主関係団体への通達には、荷主(運送委託者)が不当に単価を据え置けば改正事業法の働きかけ、要請、勧告・公表等対象になるほか、私的独占の禁止や公正取引の確保に関する法律違反の恐れがあることも明記している。
経済産業省も関係約1400団体に対し経産大臣、公取委員長連名文書で下請取引の適正化を要請した。下請代金支払等の適正化、最低賃金の引上げや働き方改革に伴う下請事業者への不当なしわ寄せ防止などを掲げる。年末にかけて資金繰りに支障を来さないようこれら周知徹底が求められる。
中小零細企業はコロナ禍の厳しい経営環境に直面する中、原油高騰に円安も相まって原材料・エネルギーコスト上昇が大きな打撃を与える。全国中央会の10月景況感調査では運輸業の収益状況指標が5カ月連続で悪化、燃料高騰がボディブローのように経営を圧迫する。また一部では価格転嫁も進み、販売価格指標は上昇を示しており9月の「価格交渉促進月間」の活用成果も聞かれる。
トラックの今般の燃料高騰に関する相談窓口も本省、地方運輸局、運輸支局に新たに設置された。荷主も厳しい環境に置かれるが、国をあげての取引適正化要請措置を背景にしっかりと交渉を促したい。