取引慣行の見直しを

4月から働き方改革関連法の各改正事項が順次施行されるが、大企業に時間外労働の上限規制が適用されると中小企業への無理な発注が増える懸念がある。こうした中で厚生労働省、国土交通省、中小企業庁は先ごろ、短納期発注など長時間労働につながる取引に配慮するよう各事業主団体へ文書を発出した。

働き方改革への関心が高まり、これまでの企業風土や職場慣行を見直す動きが広がっている。社内の動きにとどまらず、他社との取引でもしっかり改革を進める必要がある。

日本経済団体連合会は、2017年9月に長時間労働につながる商慣行の是正に向けた共同宣言を公表した。経済界の強い意志を示し、各団体の加盟企業における取り組みの推進を目的としてまとめたものだ。

その一方で、現実的には、働き方改革に関する中小企業の厳しい声が聞かれる。

中小企業庁は昨年、働き方改革に関連してアンケート・ヒアリング調査を実施した。

そこからは「親事業者の業務標準化で、発注数量が予定より大幅に増えても納期を変えず、しわ寄せが発生する」「親事業者の残業時間制限により、処理できない仕事が回ってくる」「地方公共団体の発注は年度後半に偏り繁忙期になる」「親事業者の働き方改革で年末年始に発注が集中し、三が日も操業した」など適正な生産計画や発注の平準化が望まれる。

トラック運送業からは、「多頻度小口配送が常態化し、納入先の近くに倉庫を貸借するなどの対応が必要でコストがかかる」「現場まで運送しても工事延期がある場合は、荷物を持ち帰らなければならず、費用もみてもらえない」などの声が聞かれる。

中企庁ではこうした現場の生の声から、受注企業に配慮した生産計画、発注の平準化に納期・納入頻度の適正化、適正なコスト負担などを発注側企業の留意事項として示している。

今回、国が協力を呼びかけた文書には、これら調査から取りまとめた内容もリーフレットとして同封し、配布や広報誌の掲載などによる傘下企業・団体への働きかけを求めている。

働き方改革関連法で改正された労働時間等設定改善法では、長時間労働につながる短納期発注や発注内容の頻繁な変更を行わないよう配慮することが事業主の努力義務となっている。施行を間近に控え、取引慣行の見直しを周知徹底するとともに、これらを継続して発信していく必要がある。