危機意識共有し物流改善を

新型コロナウイルスの感染拡大と、新しい生活様式への対応がサプライチェーンの商慣習にどのような変化をもたらすのか。日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の会員企業アンケート調査では7割が変化するとの回答だ。ドライバーをはじめ物流現場の労働環境がプラスに向くものとしたい。
JILSの調査結果では、感染拡大により物量の減少や業績へのマイナス影響など、前回の3月調査よりも状況は悪化している。受注・販売状況をみると、品目により大きな増減が見られ、各流通段階において混乱が続いていることが伺える。
こうした中で、荷主の3割が取引先との調整による物流条件の変更に取り組み、うち8割以上が効果があったと回答した。また、検品・伝票レス化や納品時間指定の緩和、ドライバー付帯作業の業務化といった商慣習については、荷主、物流企業ともほぼ7割が変化するとの回答だ。
ほか調査結果では新しい生活様式への対応で想定される課題として、非接触型業務への移行に関するものや、荷役作業の自動化・省人化、パレット輸送の拡大、ECビジネス拡大による個人客納品体制の強化などをあげる。深刻な人手不足もコロナ対策を通じて課題解決の新たなヒントを見出したいところだ。
日本物流団体連合会の渡邉健二会長は定時総会の挨拶で、コロナ対策として会議や講演、イベントなどウエブ併用の取り組みを模索すると同時に、変わらない活動の方向として「物流の標準化、規格化推進という古くて新しい課題」をあげる。
昨年度は政府主導により、加工食品や食料品など標準化の検討が業界を超えて進められており「コロナウイルスの影響により物量が減ることで、せっかくの動きを止めてはならない」と強調する。
昨年10月に立ち上げた省庁連携・官民による「食品流通合理化検討会」では予算を活用し、産地主導によるパレット化の推進や集出荷拠点の集約など、8項目について今年度全国各地で具体的な実証事業を行う。
働き方改革が進む中、トラックドライバーをはじめとする食品流通に係る人手不足の課題に対応するにはサプライチェーン全体での合理化が急務である。地方創生、活性化も大きな課題であり、検討会では自治体主体のプロジェクトも政府と連携して具体化を進めるという。
コロナへの危機意識をサプライチェーン全体で共有し、物流標準化、全体最適化へ連携を強める流れにしたい。