効率化先進事例を広く共有

トラックドライバーの長時間労働是正に対し各方面で改善策が進められているが、とりわけ拘束時間の長い幹線輸送の対策は喫緊の課題だ。国土交通省は幹線輸送の効率化に向け事例など手引きとしてまとめる考えで、広く浸透させたい。
15日に国交省が行った物流効率化セミナーで、幹線輸送のトラックドイバーは2024年4月からの時間外労働の上限規制適用により約18%不足することが明らかになった。
高速道路利用で1日片道300㌔㍍超を効率化したい幹線輸送の距離と想定。これはトラック輸送全体のトンキロベースで6割を占めており、人手不足は経済、社会を支える物流インフラの維持に多大な影響を及ぼす。
こうした〝ものが運べない〟危機感をサプライチェーン全体で共有化する動きにあるが、時間外労働時間の上限規制適用まで3年。遠い将来の話ではない。もう一段のアクションを起こさなければ物流危機はより現実的なものになる。
トラックドライバーは賃金水準も低く、給与面も他産業と同等とすると時給水準の上昇も必然であり労働力不足が続けばさらに経営を圧迫する。
2021年度からの新たな総合物流施策大綱の策定へ、昨年12月に有識者会議で示された提言には物流DXや標準化による全体最適化とともに、上限規制の適用を見据えた労働力不足対策を重点の1つに示している。省庁連携で確実に施策に反映してほしい。
セミナーでは事例発表が行われたが、朝日健太郎国交大臣政務官は冒頭のあいさつで、慢性的な長時間労働の実態など物流を取り巻く環境が厳しい状況の中「さらなる物流効率化の推進はまったなしの対応」との認識を示す。効果的な取り組みには荷主の理解と協力が不可欠で、サプライチェーン全体で取り組む必要性を強調する。
事例発表では積替拠点を活用した食品共同配送網やリードタイム延長による輸送モードの複々線化、ダブル連結トラックによる積載量・労働環境改善、最適中継ポイントの拡充など紹介された。いずれも荷主との連携で効率化に積極的に取り組むもので周知させたい。
幹線輸送の生産性向上への方策にはモーダルシフト、中継輸送、トレーラ、ダブル連結トラック、スワップボディコンテナなどあげられるが、メリット、デメリットなど明確な情報提供が重要だ。
そのためにも公表される先進事例の活用は有用であり、導入支援策の拡充も含め中小事業者も前向きに取り組める体制が急がれる。