再発防止へ徹底した周知を

大型車の車輪脱落事故が後を絶たない。国土交通省は検討会を設置し、事故要因調査・分析のうえ、さらなる事故防止策を講じる。この間、様ざまな措置をとってきたが、今年度も事故件数は100件を超え、人身事故も発生している。実効性ある対策と徹底した周知策が必要だ。
事故の多くがトラック。トラック運送業界は、国民生活と社会経済活動になくてはならないエッセンシャル事業である。コロナ禍も日夜敢行する姿は地域、社会からの信頼を確実に得ている。その一方で、こうした事故は大事故に繋がりかねないものであり、負のイメージを与えかねない。
群馬県渋川市で1月12日に発生した事故が記憶に新しい。走行中のダンプカーからタイヤ2本が脱落、1本が500メートル転がり歩道を歩いていた男性に直撃した。一般メディアも大きく報道し、国交省が数年前に作成した実験映像も紹介されるなど、車輪脱輪事故の危険性が広く伝えられた。
当該事故は白ナンバーによるものだが、世間一般にはそうした認識は薄い。昨年6月に起きた千葉県八街市の飲酒運転事故と同様に「事故ゼロ」への意識を高めていかなければ、トラック、物流全体のイメージ低下を招いてしまう。
全日本トラック協会は、冬用タイヤに交換した大型トラックから左後輪が外れ歩行者に衝突する事故が相次ぎ発生していることから、8日の交通対策委員会で緊急決議を採択した。「輸送の安全確保を最優先にトラック運送事業を遂行するにあたり、あってはならない極めて憂慮すべき事案」と現状を重く受け止め、再発防止に取り組む。
国交省が立ち上げた検討会では、タイヤ専業店、自動車整備事業者、運送事業者の作業者に対するヒアリングと、運送事業者にはタイヤの保安管理状況に関するヒアリングも行う。大きな要因とされるホイール・ナットの点検に関する実証実験や、海外の事故調査も行う考えで、ソフト、ハード両面からより踏む込んだ議論が求められる。
直近でも啓発キャンペーンを行い情報発信に注力するが、より効果的な周知策が肝要だ。検討会でもこの課題について議論し、各媒体の活用や白ナンバーも含めた広い周知を図る考えだ。
検討会には全ト協や日本バス協会の運送事業者、日本自動車工業会に、自動車整備、タイヤ、自動車機械器具と各業界が揃う。危機意識を共有し関係業界一丸で再発防止に努めてほしい。