全体効率化へ強い意識を

トラック運送業をはじめ物流分野全般に人手不足は深刻化している。こうした中でも消費者のニーズの変化、多様化から多頻度小口輸送が進展しており、物流効率化の促進には荷主の理解が不可欠だ。荷主側も物流維持に対する危機意識が強まっていることも確かである。
藤田耕三国土交通事務次官は8日の就任会見で、物流総合効率化法(物効法)の認定状況に触れ「効率化へ意識が高まっており、物流、荷主業界の連携、あるいは荷主業界の相互連携を促していく」と意欲を示した。サプライチェーン全体で効率化が進むよう積極的に働きかけていく考えだ。
2016年10月の物効法改正からこれまで154件を総合効率化計画に認定した。藤田事務次官は「大変多くの取り組みがこの法律の仕組みを利用している」とし、物流効率化に物流業界のほか、荷主業界も意識が高まっていることを表わすものと評価している。
物効法認定のメリットには、営業倉庫の減免制度や市街化調整区域に物流施設を建設する場合の開発許可に関する配慮、モーダルシフトなどの取り組みに対する補助がある。
事業者の収益面でも一段の効率化施策が求められる。物流事業者の4-6月期決算では単価は改善も輸送数量の減少が業績に影響を及ぼした。景況感の各指標も悪化しており、数量拡大が厳しい中でさらなる収益基盤強化に迫られている。
国交省では昨年立ち上げた共同物流促進に向けた研究会の議論を踏まえ、物効法の認定対象について、共同輸配送のヨコ連携にとどまらず、発着荷主のタテ連携を含めて全体効率化を図るなど対象範囲を広げていく。
7月1日に着任した瓦林康人公共交通・物流政策審議官は「主に輸送網の集約、輸配送の共同化、モーダルシフトの取り組みを支援してきたが、より幅広く対象を広げて横展開を図りたい」と活用を促す。また公共交通・物流の連携の中で〝貨客混載〟を例にあげ、物流効率化にもシナジーを追求していく考えだ。
直近の認定事例では日本マクドナルド、読売新聞などによる食塩と新聞の共同輸送、キユーピー、日本パレットレンタルなどによる加工食品と日用雑貨のモーダルシフトと空車回送を極限に減少させた共同輸送と、業種の枠を超えた前例にない取り組みがみられる。
物流の全体効率化へさらに意識を高めるにも、こうした事例を広く周知、共有させていく動きが求められる。