働き方改革を飛躍へのバネに
2023年の幕が開けた。
トラック運送業界は働き方改革の総仕上げとなる。改正改善基準告示(2024年4月施行)をしっかりと周知し、労働条件において他業種との格差是正に努めなければならない。コスト圧力の厳しい事業環境は続くが、物流に対する世間の目は確実にフォローに向いている。
コロナ禍においても安定した輸送を提供し、地域の経済と暮らしを守るトラック運送業界はエッセンシャル事業としての評価が根付く。迫る「2024年」問題については一般メディアも取り上げ、厳しい現実に対して「正しい理解」を促す。
物流危機への意識醸成がなされている。
2021年末に政府が取りまとめた「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化パッケージ」に基づき、省庁連携による取引適正化への動きが大きく前進する。実効性とともにスピード感をもった対応が期待されるところだ。
厚生労働省は12月23日に改善基準告示を改正するとともに、都道府県労働局に、発着荷主に対してトラックの長時間労働を発生させないよう働きかける「荷主特別対策チーム」を編成した。
こうした国の後ろ盾があることを強く認識し自信を持って改革に臨みたい。
あらためて改正貨物事業法において2024年3月までの時限措置である「荷主対策の深度化」と「標準的な運賃」の活用が必須だ。この間のコロナ禍の運用でもあり、時限措置の延長・恒久化を求める動きにあるが、中小、小規模事業者が多くを占めるトラック運送業界は足元の収支改善が喫緊課題。まず現行制度をしっかり活用し、ドラバーの労働条件を改善させる必要がある。荷主も厳しい状況に置かれるが、物流を止めないためにも「荷主対策」への情報提供、「標準的な運賃」の届出促進が求められる。
コロナ禍も4年目に入りウィズコロナの新しい日常、経済活動が確立されつつある。景況全般では総じては緩やかながらも増勢を見据えた事業施策を講じたい。
トラック運送業界は厳しい経営環境下、自助努力、創意工夫で様ざまな経営効率化、生産性向上へ努力を重ねている。さらに事業者間、荷主との連携、異業種も巻き込んだ協働の動きも広がり、景気の回復によりこれらは守りから攻めの武器になる。加速化するDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)の潮流をしっかりとらえたい。
DX、GXはサプライチェーン全体の在り方が模索される。各省庁来年度予算案ではこれら支援措置を拡充している。とくに大手が先行して先進事例によりそのメリットを示し、中小、小規模も前向きに戦略化できるような方向付けが望まれる。
中小、小規模事業者は機動力を生かしながら独自の強みに磨きをかける。地域と共生するトラック運送業界はニーズを汲み取りながら、事業を通じて環境対策・地域振興にも貢献し、なくてはならない存在感をさらに高めていきたい。魅力あふれる産業へと進むべく大きな転換期になる。
物量の回復に、長年の商慣習是正への動きが強まるなど着実に〝正常化〟へと向かっている。この間、前向きに働き方改革に取り組む企業はその経営基盤の力が大きなバネになり飛躍への期待が増す。
「2024年」の先にある展望も描きたい。働きやすい環境をつくり上げ、価値創造型へと強く踏み出す。