働き方改革と交通安全
石井国交相が、坂本全ト協会長らに対し、今年度内を目途に働き方改革の実現に向けたアクションプランを策定するよう要請した。
国交相は「国の取り組みによる効果と合わせて業界としての取り組みもさらに進めることが重要」と述べ、長時間労働の是正等に関する目標、働き方改革の実現に向けて取り組む事項、取り組み状況のフォローアップなどを内容とする計画の策定を求めた。
政府が先日取りまとめた63施策のなかにも盛り込まれていた。
働き方改革は、狭義では時間外労働に対する罰則付き上限規制導入を差すが、要は長時間労働の是正、労働時間の短縮である。
自動車運転業務の平均労働時間は、全職業平均と比較して約1~2割長い。国土交通省によると、全職業平均の労働時間は年間2124時間であるのに対し、大型トラックは2604時間で480時間も長く、中小型トラックでも2484時間と360時間も長い。バスやタクシーも同様の傾向にある。
とくにこのうち平均所定外労働時間は、全職業平均の年間156時間に対し、大型トラックが468時間、中小型トラックが384時間、バスが492時間、タクシーが288時間と約2~3倍の長さだ。
その一方、年間賃金は、労働時間が長いにもかかわらず、全職業平均より約1~3割低い。全職業平均が490万円であるのに対して、大型トラックで447万円、中小型トラックで399万円、バス448万円、タクシー330万円だ。
自動車運転業務の時間外労働の上限規制は年960時間(月平均80時間以内)とされたが、現在の労働者のうち、月80時間の時間外労働をする労働者の割合は、自動車運転業務の場合、4割に達し、全職業平均の約3倍となっている。
直ちに法律が改正されれば、4割の労働者が違法になってしまう計算だ。
一方で、ドライバー不足は日々深刻化している。自動車運送事業の働き方改革は、次代の担い手を確保するためにも喫緊の課題となっている。
最近トラックの事故が目立つ。ドライバー不足の影響による過労運転でなければ良いのだが、と心配する。まさしく、過労運転にならないような短時間の業務が働き方改革の観点からも期待されている。が、果たして長距離輸送でそれが可能なのか。
フェリーを活用したり、中継輸送を試すなど、知恵を絞りたいところだ。