個々の事業者が動く必要

景気の判断がつきにくい状況になっている。

全国中小企業団体中央会がまとめた景況調査によると、7月は全国的な猛暑による夏物商材の荷動きが活発化し、運輸業の売上高DIは0・0と前月より12・8ポイントも上昇して水面下から浮上した。一方、製造業では、食料品の売上高DIがマイナス29・2と前月比16・8ポイントも下落し、大幅に悪化した。

猛暑と大雨による集客減のほか、恒例のギフト商材が消費者の廉価志向から敬遠されて低迷した。人手不足による賃金アップや天候不順に伴う原材料の確保難なども悪化要因の一つだ。

運輸業の主要3指標は、売上高と収益状況DIが13~12ポイント超、景況は6ポイント超と全体平均を大きく上回る上昇となった。

夏物商材は好転しているものの、受注量は前年比で減少傾向にあるため「景気回復の実感がない」トラック運送事業者は少なくない。

背景には、ドライバー不足の継続と労働規制の強化に加え、燃料価格が高値傾向となっていることが考えられる。「仕事があっても人手不足で車両の稼働率が低調」「ドライバー不足で新規の荷主からの要望には応えられず、増収は難しい」など先行き不安の声は依然として強い。

また、運転者の拘束時間規制に伴い、長距離輸送の外注化や撤退が進み、鉄道・海上輸送に転換する事業者も出ている。

JR貨物の7月輸送実績は、コンテナと車扱の合計が9カ月連続で前年を上回った。大雨や送電障害の影響等により、月全体で高速貨物列車263本が運休になったにもかかわらずの増送である。

コンテナ貨物は、積合せが前年同月比2・8%増、食品工業品が1・7%増と好調で、ドライバー不足を背景に鉄道へのシフトが進んでいることを裏づけている。

全ト協がまとめた7―9月期の景況感見通しでは、輸送量がやや悪化する見通しで、景況感は横ばいを見込んでいる。一方、人手不足感は一旦は緩んだものの、7―9月期は再び過去最高を更新する見通しだ。

人手不足に伴なうコストアップを吸収するためには、適正運賃・料金の収受が必要だ。

例えば国土交通省では、標準運送約款を改正し、待機料金や積込み・取卸し料金などを運賃とは別に明確化して収受しやすくしている。

改正内容を反映するためには、認可申請など、それぞれの事業者が手続きをとる必要がある。

個々の事業者が動かなければ、各指標は好転しない。