事業法改正と労働環境改善
自民党トラック輸送振興議員連盟(トラック議連)は20日、総会を開き、貨物自動車事業法の改正案を承認した。与党国土交通部会の了承を経て野党に説明、議員立法として今国会へ提出し、早期成立を目指している。
改正案は、トラック運送事業の健全な発展を図るため、①規制の適正化②事業者が遵守すべき事項の明確化③荷主対策の深度化(一部時限措置)④標準的な運賃の告示制度の導入(時限措置)などの措置を講じることとしている。
トラック運送事業は2024年4月から時間外労働の罰則付き上限規制(年960時間)が導入されるが、現状のままでは、担い手であるドライバーの不足により重要な社会インフラである物流が滞ってしまう懸念があり、緊急に運転者の労働条件を改善する必要に迫られている。
事業法改正案は、物流機能を維持するための対応策として位置づけられている。現状の行き過ぎた規制緩和に対しては「規制の適正化」を講ずるほか、輸送の安全や事業の的確な遂行ため「事業者が遵守すべき事項の明確化」をあげている。
「荷主対策の深度化」として、既存の荷主勧告制度を強化するほか、荷主の配慮義務を新設し、国交相による荷主への働きかけ等の規定(2023年度末までの時限措置)を盛り込んだ。
一般論として、中小トラック運送事業者は荷主との交渉力が弱く、必要なコストに見合った対価を収受しにくいため、結果として法令遵守しながらの持続的な運営ができない実態が少なくない。ドライバーの労働条件の改善・事業の健全な運営の確保のため、国交相が標準的な運賃を定め、告示することができる制度を23年度末までの時限措置として設ける。
自民党トラック議連の細田博之会長は議連の総会あいさつで「一気に国会で成立させるよう頑張りたい」と今国会での成立を強調した。
全日本トラック協会の坂本克己会長は、これまで「悪貨が良貨を駆逐する」行き過ぎた規制緩和から、規制の適正化を訴えてきた。事業法改正に向け、「仕事に自信と誇り持ち、経済発展に貢献し明るく活気溢れる日本にしたい」とトラックドライバーの賃金・労働時間など労働環境を世間並み水準に引き上げる必要性を強調した。
トラック運送業界には、法令を遵守する事業者と、遵守できずに長時間労働を行う事業者が混在している。法令を守る事業者にドライバーを集め、労働環境を改善していくことが期待されている。