主体的に取引環境改善を
荷待ち件数の多い輸送品目ごとに、荷主、物流事業者、学識経験者による懇談会で対策を検討してきた内容が取りまとまった。国が2018年に策定した「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」の各論編といえる。トラックドライバーの労働環境改善へサプライチェーン全体で共有したい。
トラック輸送の生産性向上やドライバーの長時間労働の是正には、個々の輸送品目で抱える課題に違いがある。これらの把握と改善策の検証へ18年度から各懇談会を立ち上げ議論を重ねてきた。対象は調査で30分以上の荷待ち時間が生じた件数の多い「加工食品」「建設資材」「紙・パルプ」。紙パルプはさらに実情が異なる家庭紙と洋紙・板紙に分けて議論を進めた。
策定した各ガイドラインは参考資料を含め50~80頁のボリューム。例えば加工食品では検品時間、建設資材は建設業の工期に左右されるなど根本的な課題は異なる。対策の重点もそれぞれだが、物量の平準化、パレット化の推進や、サプライチェーン間の情報共有といった取り組み、電子化、標準化というキーワードは共通するところだ。
懇談会を通して行った実証実験や実態調査をもとにした課題摘出や解決の方向性、事業者の事例などがガイドラインに詳細に盛り込まれており、関係事業者は自社の取り組みと照らし合わせながら検証を促したい。
国土交通省ではこれらの普及に向け、荷主関係の団体に会員への周知を働きかけるなど広く浸透させる考えだ。そこではあらためて品目ごとのガイドラインを策定した背景を再認識したい。
人手不足がさらに深刻になれば現状のトラック調達コストの上昇に追い打ちをかけ、ゆくゆくは「物を運びたくてもトラックがなくて運べない」状況になりかねない。ドライバーの労働環境改善へ取引適正化がまったなしであるとの危機意識を関係者で共有することが大前提である。
この間、国の施策では「ホワイト物流推進運動」が並行して進み荷主側の理解も着実に進んでいるといえる。ガイドラインにはこうした経緯も記載されており再確認したい。
国交省では他の荷待ち件数の多い「生鮮食品」「飲料・酒」についても、今年度から懇談会の設置も含め検討、解決策を示す方向であり、それぞれ深掘りした議論に期待したい。
荷主や関係事業者は現状を喫緊の課題ととらえ主体的に取引環境の改善に取り組んでほしい。