中小事業者の活力向上を

主要物流企業の2021年度業績では多くが増収増益を達成した。コロナ禍で変化した市場においてニーズに対応し需要を取り込むとともに、生産性向上、コスト改善策にも一定の成果を得た。
3月期決算を中心に業績を公表する87社の21年度実績と22年度予想を本紙で調べたところ、実績は87社中76社が増収、68社が営業利益で増益・改善。予想では64社が増収、48社が営業利益増益・改善を見通す。とくに大手の業績拡大が目につく。
感染拡大による物量の減少で前年の20年度は多くが減収となったが、経済活動の再開で回復し21年度はその反動増によるところが大きい。
加えて、巣ごもり消費で裾野が広がったEC領域や日用品関連が継続して活発。海外も物量回復とそれに伴い逼迫した海上コンテナ不足に対し、物流がしっかり機能したことがこれら業績に反映したといえる。
宅配業界をみると、今年度の取扱個数予想ではヤマトホールディングスは8・5%増だった21年度対比でさらに6・2%増の約24億1600万個を、SGホールディングスも1・4%増だった21年度対比1・0%増の14億3000万個の計画を組む。
ヤマトHDは供給網整備による費用増もあり前期は減益だったが、大手各社の動きからは市場変化にしっかり対応し、アフターコロナを見据えた新たな成長戦略の方向が鮮明になってきた。海外事業に注力する日立物流、近鉄エクスプレスへのTОBの動きも、物流業界が創出する新たな価値への関心の高さを表わしている。
一方、コロナ禍の対応に原油高によるコスト増、ウクライナ情勢と各影響の長期化で収益環境は厳しく先行き不透明だ。物流事業者はコスト調整・適正化、一段の生産性向上に努めるも、現下の状況では自助努力の利益改善策にも限界がある。
物流業界の多数である中小零細の経営者の認識はさらに厳しい。全日本トラック協会の1-3月期景況感調査では、輸送量や運賃料金水準は改善傾向も、燃料高騰分が販売価格に転嫁されず、運送原価の増大で判断指数は落ち込んだ。原油高による様ざまなコストアップ要因の先行き不透明さが経営者のマインドを下げている。
政府の原油価格・物価高騰等総合緊急対策では、地方創生臨時交付金が拡充されるなど中小事業者の負担軽減へ措置が図られているが、市場変化に対し経営者が前向きな施策に動けるようさらなる後押しが必要だ。