ワンチームで改革を

業界団体、企業の新年会におけるトップ、関係者の挨拶からは、標準的な運賃の告示制度の導入、東京2020大会の物流対策への発言が多く聞かれる。働き方改革がいよいよ本番を迎える中で、事業者の経営に大きなインパクトを与えるであろう、これらの意義を再確認し、共通認識を深める必要がある。
改正事業法における「標準的な運賃の告示制度の導入」が年度内施行に向け準備が進められている。国土交通省の伊地知英己貨物課長は「実際に荷主との交渉において、どういった原価を使っているかを具体的に告示の中で示したい」と荷主との交渉ツールへの活用を呼び掛けている。
標準的な運賃の告示制度は、運送事業者が荷主への交渉力が弱いなどを背景に、必要なコストに見合う対価を収受し、法令遵守で持続的運営ができる際の目安となる運賃を国土交通大臣が定めるもの。法的強制力はないが、法令遵守できる目安を国交大臣が定めることから、荷主へ説得力のあるものとして交渉材料への活用を促す。
とくにトラック運送業界は人件費が一般より2割低いとされる中で、この運賃の設定にあたっては人件費を全産業平均並みにしたことなど、実勢運賃よりも相応に高い基準が想定される。
事業者からは「荷主にとっても標準的運賃に合わせないと法令遵守されないことになる」と国の支援を背景に前向きにとらえながらも、「現状との運賃格差をどこまで埋めるか交渉力にかかる」とより荷主と交渉しやすい環境整備を求める声も聞かれる。
改正事業法では事業者の規制と荷主対策の項目が既に施行されており、これらも含め荷主に対してのさらなる情報発信と理解、協力が求められる。
一方、「東京2020大会」は物流対策とともに、荷動きの売上への影響、また大会に向けた交通対策への情報が少ないことへ懸念の声が多く聞かれる。
東京都は先ごろ、事業者団体などへTDM推進プロジェクト登録への協力依頼文書を発出した。新たに大会時の遅延等を想定した所要時間・経路探索システムを開発し、プロジェクトの登録で、同システムが利用できることなど広く周知を図る考えだ。
大会における対策が将来の物流生産性向上のレガシーともなるべく、発着荷主、物流事業者が連携し、サプライチェーン全体で認識を共有する必要がある。
これら課題解決を「ワンチーム」による前向きな改革ととらえたい。