ライバルが鉄道で共同輸送

アサヒビールとキリンビールは27日、日本通運、日本貨物鉄道(JR貨物)と協力し、関西エリアの工場から出荷するビールやノンアルコール・ビールテイスト飲料、清涼飲料水などの輸送を鉄道コンテナで共同輸送する、と発表した。

石川県金沢市に、共同配送センター(延床面積1200坪)を開設して来年1月から配送を始め、来秋には富山にエリアを広げる。

共同配送センターは、金沢市の日本通運専光寺物流センター内の既存施設を活用。運営する日本通運は、アサヒ、キリン両社の製品を管理し、センターからの配送は両社の物流子会社が担当する。

共同輸送のフローは、アサヒビール吹田工場(吹田市)とキリンビール神戸工場(神戸市)で製造したビール系飲料水などを、吹田貨物ターミナルまで運んでコンテナに積み込む。JR貨物が北陸―関西間の往復輸送で生じる空コンテナを活用して金沢貨物ターミナル駅まで運び、日本通運に引き渡す。

両社ではこれまで、愛知、滋賀両県にある工場から輸送先までの200~300kmをトラックで配送してきたが、ドライバー不足などで、トラック配送に替わる新たな物流体制の構築が課題となり、新たな物流体系の構築を今年1月から模索してきた。

年間で長距離トラック1万台相当分の輸送を鉄道にモーダルシフトすることにより、年間約2700tのCO2削減を実現するという。

アサヒとキリン両社は、2011年8月から首都圏での小口配送および茨城、埼玉、長野、静岡の4県の一部地域で空容器の回収を共同で行っており、昨年6月からはサッポロビールを含む3社で協力している。

今回の共同輸送は、ビール系飲料でし烈な競争を行っている両社が、物流企業と協力・連携して、幹線輸送に鉄道コンテナを使い、物流分野で協業を拡大する取り組みで、異例のことだ。

この協業は、環境負荷の低減とトラックドライバー不足などの社会的課題の解決に取り組む「新たな物流モデルの確立」ともいえよう。

共同輸送は、個別で配送を行ってきた複数の企業が共同化することにより、貨物を積合わせて輸送コスト削減を図る形態で、現実的には、実施が困難なケースが多いといわれる。

地球規模で問題となっているCO2をはじめとする温暖化ガスの削減、ドライバー不足による現行のトラック輸送に替わる新たな物流体制の構築――という今日的課題への取り組みとして、注目したい。