モーダルシフトの進化に期待

日本物流団体連合会のモーダルシフト取り組み優良事業者表彰式で、渡邉健二会長は菅義偉首相のカーボンニュートラルを2050年までに実現するとの発言を受け「気運はモーダルシフトに大きく傾いた」と関係者連携によるさらなる推進を呼び掛けた。脱炭素社会の実現にもモーダルシフトの期待、役割は大きい。
物流連の同表彰制度は、2003年度からの「モーダルシフト取り組み優良事業者公表制度」を、物流事業者の取り組みとして広く社会へ紹介し、その重要性を強く発信することを狙いに14年度に改定したもの。今年度は新型コロナウイルスの影響が懸念されたが、例年並みの応募があり事業者の取り組みが浸透していることが伺える。
モーダルシフトが果たす役割は多様であり、実用化、普及が進むにつれその可能性も広がる。労働力不足、環境負荷軽減、輸送の効率化の観点などから最も優れた案件を表彰する大賞には、F-LINEの南関東支店マルチモーダルサービスセンターが選ばれた。メーカーとの交渉でリードタイムが1日伸びることへの了承を働き掛け、トラック輸送を海上、鉄道に転換。輸送モードの併用は〝複々線化〟であり災害時にも柔軟に対応するなど多角的な評価を得たものだ。受賞案件の内容も年々進化している。
国土交通省によると、物流総合効率化法による認定件数は10月末現在で232件あり、うちモーダルシフトが89件。国はモーダルシフトへの支援を強力に進める考え。さらにコロナ禍で「物流がエッセンシャルサービスであることが荷主にも浸透してきた」(久保田雅晴公共交通・物流政策審議官)ことから、物流事業者、荷主が一体で効率化に取り組む流れも強まり、モーダルシフト推進には追い風にある。
エッセンシャル事業としての物流への再認識に、コロナによるニューノーマルへの転換を商機ととらえたい。これは国が現在進めている次期物流施策大綱策定の議論でも聞かれる。先日の会合で示された骨子案にある「簡素で滑らかな物流」、「担い手にやさしい物流」、「強くてしなやかな物流」の3つの観点が示すように、これまでの慣習にとらわれない柔軟な発想が持続可能な物流の構築には不可欠だ。
今般のF-LINEの複々線化という選択肢を広げたことは正しく柔軟な発想で強靭化に対応したものだ。事例を広く周知しモーダルシフトのさらなる進化を促したい。